中国軍の危険な挑発行動が示唆する“力の誇示”──45m接近は偶然なわけないだろ

2025年6月、中国海軍「山東」空母発艦のJ-15戦闘機が海上自衛隊のP-3C哨戒機へ、最短45メートルまで異常接近した件(防衛省によれば6月7〜8日)が報道され、日中間で再び緊張が高まっているJ-15は、P-3Cを40~80分にわたって追尾。最接近時は45メートルという至近距離にまで迫っている。これは、単なる演習の一環ではなく、中国による戦略的な「危険な偵察」行動の延長と考えるべきだろう。

これは偶発的な衝突や外交的緊張を招くリスクを伴い、軍事的な「威嚇」や「実力誇示」である。

中国軍の行動は、南西諸島周辺の空と海におけるプレゼンスを強化し、日本側の警戒監視能力を試す狙いがあるとも考えられる。

日本としては、国際法に基づいた冷静な対応を保ちつつ、周辺国や同盟国との情報共有や連携を強化していく必要がある。特に、ルールなき「接近行動」は、過去に米中間でも航空機の接触事故を引き起こしており、地域の安定を脅かす重大なリスクとなる。

産経新聞の記事:中国軍空母艦載機、海自機に45メートルまで接近(産経新聞)

この事件は単なる偶然ではなく、中国による意図的な「危険接近」戦略の象徴と見るべきだろう。その背景には、次のような一連の軍事プレゼンス強化がある。

空母2隻同時展開と空中挑発

この種の危険な接近は、非正規戦術(グレーゾーン戦術)の典型例だ。わずかな挑発で米・日を牽制しつつ、国際的な非難や制裁の本格化を回避していく作戦だ。

自衛隊フィクション作品の着地点──特殊部隊・諜報機関をめぐる“想像”と“現実”の交錯

🔍頻発する海空域での挑発行動

これは、いつ本格的な戦争状態に入るかわからない危険な行為であるが、中国の威嚇的な行動は今に始まったことではない。

  • 沿岸でのヘリコプターや偵察機による領空・領海侵入(尖閣周辺、沖縄・長崎など)も相次いでいる

  • 偵察艦艇や海洋監視船の頻繁な接近(2024年は353日以上に及ぶ)も記録され、日台間の緊張に影響を及ぼしている

  • その他、南シナ海ではレーザー照射事件や武装登船事件など、威圧的な公安・海警の活動も継続している

  • 中国側は「訓練の一環で通常の活動」と主張するが、実効支配圏外の太平洋域での空母+機動部隊展開に接近行動を重ねており、単なる訓練とは整合しがたい。

  • 中国空母「山東」と「遼寧」が、初めて太平洋域内で同時展開し、南西諸島近海や第二列島線方面で訓練を実施

  • 過去には同空母群が「第二列島線」突破通過など、力の誇示とも取れる広域展開を続けている


📌これらの意味するところ

主張 意味
軍事力の誇示 太平洋まで戦力を投射できる能力を示し、米・日など周辺国への“見せつけ”
非接触・灰色地帯戦術 国際法や衝突は避けつつ威圧感を醸成し、相手の抑止力を削ぐ狙い
情報=戦略優位の強化 接近を記録させ動揺を伴わせることで、日本国内外へのメッセージとなる

日本側の対応と地域への示唆

  • 防衛省はこの接近・追尾を「異常接近」と明言し、中国に抗議すると同時に再発防止を強く要求

  • 同時に、自衛隊は警戒網強化や警戒機運用の見直し、日米連携体制の強化など、実務的な対応を急いでいる。

  • 今後は同様の事件に巻き込まれないためのルール整備が求められるとともに、誤接触防止の通信チャネルや緊急時の手順なども連携強化の一環として進められる。

防衛省・自衛隊は、接近を「通常の訓練ではあり得ない異常行為」とし、中国側に抗議し再発防止を要求同時に、自衛隊の早期警戒態勢強化、カウンター航空監視物資の配備計画が加速している状況だ


構造的緊張と地域のリスク

今回の極端な接近は、日本への明確な技術的・心理的挑発である。「力を背景にした監視と牽制」である。地理的優位に立つ中国が、あえてリスクを取る危険な接近で「航空的な戦意表明」を行ったと見られる。

わずか数秒の接近が引き金となり、相手国のパイロットや管制官に不安を与え、エスカレートすれば航空機事故や国際問題へと飛び火しかねない。今こそ、日米を中心とする連携防御体制の強化と、接触回避の国際ルール整備が急務である。これに対し、日本は自主防衛の強化策を含めたリアクションが求められる。

灰色地帯での“偶発衝突”や誤算が生じれば、局地的な軍事衝突にもつながりかねない。今こそ緊張を直視し、相互の安全保障体制を深化させる時である。