【映画批評】刑務所を題材にした「刑務所の中」

スポンサーリンク

刑務所を舞台にした作品の中には、作者自身が元受刑者であるという背景を持つものもあり、単なるフィクションではないリアリティが垣間見えることがあります。

中でも、2002年に公開された映画「刑務所の中」は話題となりました。原作は花輪和一氏による同名漫画で、実際に収監された経験をもとに描かれた実録作品です。

作中では、とくに食事の描写が詳細であり、「刑務所の食事は意外に良い」「食べてみたいが、さすがに入るわけにはいかない」といった反響もありました。

劇中では『北海道日高刑務所』という架空の施設が登場しますが、作者が実際に収容されていたのは函館少年院であり、同院では成人の収容者もいます。

作品内では、優良受刑者のみが参加できる2級受刑者集会(映画鑑賞会)が描かれており、映画『キッズリターン』を観ながら、受刑者たちが「甘シャリ」(甘い菓子)こと『アルフォート』を無言で口に運び、コーラで流し込むという、印象的なシーンが展開されます。

この菓子は普段は祝日か正月、あるいは受刑者集会などの特別な場でなければ提供されないもので、受刑者たちにとっては貴重なひと時です。

映画が終了すれば、すべては元どおりに戻り、包装や空き缶はその場で回収され、感想を口にすることも許されず、受刑者たちは2列縦隊で雑居房に戻されます。

中には、刑務官への当てつけのように空き缶を乱暴に投げる者もおり、その際の刑務官の鋭い視線など、演出も非常に細かく描かれています。

この映画を観終わって改めて気がついたのですが、本作には冒頭のミリタリーキャンプ(コンバットゲーム)シーンを含め、女性が一人も登場しません。男性のみが収監される男子刑務所が舞台ですので、それも当然といえば当然のことなのかもしれません。

皆さんもこの映画をご覧になる際は、アルフォートとコーラをご用意されると良いかもしれません。

刑務所が舞台とはいえ、現実のような深刻なイジメや暴力などの描写は控えめで、怖いと感じられる場面といえば、受刑者たちが青空の下で淡々と自らの罪を語るシーンや、それに続いて刑務官が怒鳴り散らす場面くらいでしょうか。

特に印象的だったのは、老受刑者がクロスワード雑誌に直接答えを書き込んでしまい、不正行為として刑務官に厳しく叱責されて、数名の刑務官によって独房に連行されていく場面です。あまりに無慈悲で、胸が締めつけられるような思いがしました。

それでも全体を通してみると、花輪氏を演じた山崎努さんをはじめ、同房の受刑者たちによる味わい深い演技や、どこか仄々とした音楽の効果もあり、刑務所を舞台にしていながらも不思議と安穏とした雰囲気のある作品となっています。むしろ、ブラック企業を描いた映画の方が、よほど凄惨だったりするのかもしれませんね。

なお、彼が収監される原因となったコルト・ガバメントの入手や、修理にまつわるエピソードは、『刑務所の前』にて描かれています。こちらも併せてご覧になると、一層楽しめることでしょう。

刑務所と食事、いわゆる“檻メシ”といえば、土山しげる氏の『極道めし』も忘れてはなりません。土山氏は「噴飯マン」などをはじめ、食にまつわる作品を数多く手がけており、食へのこだわりが強い漫画家としても知られています。

ただし、『極道めし』は本作とはやや趣が異なります。こちらでは、ムショという極限の空間の中で、各受刑者が「美味かったメシの思い出」を語り合うのが主な題材となっています。刑務所では年に一度、正月に豪華なおせち料理が支給されるのですが、それをかけて、同室の受刑者たちがそれぞれシャバで食べた“最高の一皿”を披露し合う、という一風変わった作品です。

語り手たちは、それぞれの人生の背景とともに、こだわりの一品を語ります。そして、それを聞いた同室の仲間たちが「ごくり」と喉を鳴らした回数が多かった受刑者が勝者となる、というルールになっているのです。

もちろん、他の受刑者から食事を融通してもらうのは規則違反で、刑務官に見つかれば懲罰を受けることになります。なお、『極道めし』も映画化されていますので、こちらもあわせてチェックしてみてはいかがでしょうか。

最後に、アメリカ映画に登場する刑務所についても少し触れておきたいと思います。

壮大なスケールで描かれた映画『グリーンマイル』は、やや古い時代設定ではありますが、死刑囚と刑務官との心温まる交流が描かれており、観る者の心を静かに揺さぶる名作です。

また、シルヴェスター・スタローン主演の『ロックアップ』も印象的です。この作品は、ニュージャージー州ラーウェイにある東ジャージー州刑務所で撮影されており、本物の囚人たちがエキストラとして参加していることで話題となりました。

このように、国や時代は異なれど、刑務所を題材とした作品にはそれぞれに独自の味わいがあります。是非、観比べてみてください。

タイトルとURLをコピーしました