実は『小説版X-ファイル2016』でモルダーが使うライトに興味深い描写あり!

バナー画像の引用元 X-ファイル 2016小説版(クリス・カーター・著/竹書房・刊)

実は別項にて書いたバンドエイド・ノーズマンの回について、X-ファイル 2016小説版(クリス・カーター・著/竹書房・刊)では小説版Originalとも言える興味深い描写があったので、ご紹介および批評をしたい。

竹書房公式サイト http://www.takeshobo.co.jp/book_d/shohin/6031702

こちらの小説は『X-FILES X-ファイル2016』のエピソード全話を完全小説化とのことで、テレビ版の後に小説化されたもの。

小説版『バンドエイド・ノーズマン』のエピソードにもテレビドラマ同様、トラッシュマンが潜む廃墟の地下へ捜査のために侵入するモルダーとスカリーのシーンがあるが、その場面において以下のような描写がある。

批評のため、第三者コンテンツより一部分を出典を明記した上で引用した。引用した部分については一切改変せず、引用タグで囲み、明らかに当サイト運営者の書いた記事と区別ができるように配慮を行い、著作権法の引用の条件に合致するよう努めた。

「なんだよ?あの坊やを撃ったりしないよ。それに僕はもう、階段を駆け上がって追いかける年齢じゃない」
「私も、昔は踵九センチのハイヒールで階段を駆けあがったわ」
「昔はね。それじゃ、また、昔のようにやろうか」

モルダーは、かつて捜査の時によく使っていたのと同じ懐中電灯のスイッチをオンにする。
おなじみの青白い光が辺りを照らす。モルダーは、この懐中電灯を今でも捜査の必需品として、常に携帯しているのだ。

すると、スカリーも自分の懐中電灯のスイッチをオンにする。もちろん、スカリーも携帯している。
スカリーはちょっと自慢そうな顔をする。それを見たモルダーは、思わずニヤリとする。
ふたりはさらに階段を降りていった。

引用元 X-ファイル 2016 VOL.2 著者: クリス・カーター(竹書房・刊)

いやあ、すばらしい。Xファイルファン、とりわけ劇中小道具マニアなら、この描写に思わず唸るはず。

映画版と違い、小説版のモルダーは『かつて捜査の時によく使っていたのと同じ懐中電灯』を今でも常に携行し、捜査に活用しているのだ。

懐中電灯一本に込められた、モルダーの捜査(おしごと)にかける情熱。
そして、その小さな光を共有することで生まれる、モルダーとスカリーのパートナーとしての共通認識。

クリス・カーター、さすがである。わかってらっしゃる。
こちらも思わずニヤリとせずにはいられない。

思い出すのは1997年、あの日。
FBIのチームワーク研修会に参加するため、モルダーとスカリーは同僚捜査官たちと一緒に、たぶんラリアットレンタカー社のレンタカーに乗って移動していた。
しかし道中、事件に遭遇。モルダーは「こんなのに巻き込まれたら研修なんか行かなくて済むぞ」とばかりに、地元警察の捜査にズカズカと首を突っ込むのであった。

そしてその現場で、図らずも(!?)モルダーに便宜を図り(!?)、
『ほら、何も言わなくてもわかり合えるじゃないか。僕らにはチームワークの研修なんか必要ないだろ』
とドヤ顔で言われたスカリー。
スカリーもまた、わかってらっしゃる。

さらに時は流れ、モルダー失踪後。
新たな相棒ドゲット捜査官との活動中に、ドゲットから『懐中電灯は持ってないのか?』と聞かれたスカリー。
『あーん……持たないっ!(キリッ』
と即答した彼女。
その瞬間にこめられた彼女の気持ち──いわばモルダーとの共通アイテム──を、わかる者だけがわかればよいのである。

こういう演出が心憎い。まったくもって心憎い。

ところで気になるのは、よく言われる『モルダーがかつて捜査の時によく使っていたのと同じ懐中電灯』って、一体どれのことを指すのか。
諸説あるが、有力なのはマグライト(Maglite)社製の、3Dセルモデルあたりか。
持つとわかるが、これ、けっこう重い。
殴打武器にもなるレベルの頑丈さで、そりゃあ現場で頼りになるわけである。

いや、違うだろ(笑)

『Xファイル』でモルダーとスカリーが使ってきた懐中電灯を作品レビューを挟みながら考察!

とりあえず、でかいマグライトとマクサビーム(初期に使っていたサーチライトみたいなヤツ)は除外する。

2AAのミニマグ(ゼノン球)はともかく、スーツのポケットに入らないので。

クリスマスイブなど限定的に数回だけ使用していたSUREFIRE 6Pか?

いやいや、お前もなかなか白々しいな。Xファイルのライトと言ったらこれだろう。

これだ。なんだお前の手か。臭ぇ。じゃなくて、ストリームライト・スコーピオンだろう。

おそらく彼らがよく使っていた、というか中盤以降から依願退職までずっと捜査で愛用してきた青白い光を放つ強力な懐中電灯と言えば、これである。

まあ、いずれにせよどちらかのライトだろう。下の画像は当時ライバルっぽい関係であったSUREFIRE 6p とのツーショット。

どっちだったんだろうなあ。

そこはクリス・カーターもいちいち説明するのがめんどうだったのだろう。
商品名とか軽率に書けないご時世だし、
「キミらで勝手に想像して妄想しろ」ってスタンスだったのだと思う。
そういう計らいも、ファン心をかき立てるのである。

ところで、モルダーが使っていたと噂されるスコーピオン
あれ、ゴムスリーブ仕様だからどうしてもボロボロに劣化するのだ。消耗品扱い。

モルダーは在職中、何回ゴムを交換したのだろうか。
まあ、予算潤沢なFBIのことだ、いちいちゴム交換なんてしないで、ライト本体ごと支給されていたに違いない。
……たぶん。
でも最近は、連邦政府も赤字続きだって言うじゃな~い。あっ、これ、占い屋のジリンカおばちゃんのセリフだった。
モルダーが局のビジネスカード(たしかゴールドだったような?)で占い料金を払おうとした、あのとき。
その瞬間、モルダーがぐぬぬってなったやつ。可愛い。

ちなみに、現実でも2018年から2019年の正月にかけて、アメリカ連邦政府はマジで予算不足になり、
大部分の連邦職員が無給で働くか、自宅待機を命じられていた。
もちろんFBIも例外ではなく、現場捜査にガンガン支障が出たらしい。
アメリカ、すげーな。

モルダーは昔から捜査費の無駄遣いを指摘されていたけど、
ああいう捜査官、実はたくさんいたんじゃないのか。

──話を戻そう。

筆者はというと、調子に乗ってスコーピオンをいじり倒していたら、
買って半年でゴムスリーブがブニョブニョになった。こんな感じで。

日本フラッシュライトチャンネル様
http://www.lightch.com/other/scorpi.html

ともかく、小説版モルダーとスカリーは、いまだにキセノンのフラッシュライトを現場で使っている可能性が高い。
ひえー。
いつぞやのゴキハウス突入時みたいに、マグライトのバルブが切れるという恐怖がまた再来するかもしれない。

ちなみにトークショーでは、スカリー役のジリアン・アンダーソンが、
「キセノンの懐中電灯」や「でかい携帯電話」といった当時のアイテムを茶化していたらしい。
笑うしかない。

いや、モルダーがSurefire 6p(旧)にLEDバルブを入れて、LED仕様にしている可能性もあるぞ。それはねえよ(笑)

社外品LEDバルブでSUREFIRE 6PをLED化

小説版モルダー捜査官──。
彼が局へ復帰するにあたって、
「よし、心機一転、新しいライトを買いにウォルマートへ!」
──などと考えるわけがない。

レビューサイトで「おすすめLEDライト!ベスト10!」みたいなのを比較検討したり、
アマゾンでポチったりするような男ではないのだ、モルダーは。

20年前に手に入れたあのキセノンライトを、
ポケットにそっと忍ばせ、今なお愛用している。
モルダーはモノ持ちが良いのである。

そして、FBI装備部から最新型の「LEDタクティカルライト」が支給されても、
モルダーは「……フッ」と鼻で笑い、手に取ることもせず、
おもむろにポケットから、使い慣れたキセノンライトを取り出すのだ。

ロマン。
あくまでロマンで生きる男、それがモルダーである。


ちなみに、モルダーのライトが「私物」だったか、「官給品」だったか。
これはなかなか謎である。

もし官給品だったなら──
油田事件の責任を取って依願退職した時、
官給品のライトを、こっそりポケットに入れたまま持ち帰ってしまった可能性もある。
(ある意味、モルダーらしい雑さだ)

一方、私物だったとしたら──
あの懐中電灯は、モルダーが自分のこだわりで選び、
大事に、ほんとうに大事に、
長い時を一緒に過ごしてきた「相棒」なのだ。


それに対してスカリー。

産休でXファイル課を離れるとき、
デスクの引き出しを整理しながら、
モルダーから誕生日にもらったアポロ13号のキーホルダー──
あれやこれやと思い出の品を手に取る彼女。

そして、
「……これも」と、しみじみとした表情で、懐中電灯をカバンに入れる。

これ、最高じゃないですか。

懐中電灯一本に込められた、二人の絆、時間、想い。
Xファイル製作陣の細やかな心理描写、本当に、絶妙です。

さて、冗談抜きの話。

いまだにストリームライト社などで「キセノンライト」がラインナップに並んでいる理由。
それは、キセノン光源が特殊な職業のプロたちに、今でも必要とされているから。

LED光源は確かに省エネで長寿命だが、
霧や雨の中では乱反射しやすく、
自分自身の光で「光の壁」を作ってしまう。

それに対して、キセノンは──光の透過率が高い。
だから悪天候や火災の煙の中でも、
しっかりと遠くを照らし続けることができる。

この特性が必要とされる現場──それは、消防士。
悪天候や火災現場での救助・捜索活動に、キセノンライトは今なお欠かせない存在なのだ。

ひえっ。モルダー、結果的にプロ仕様。
さすがである。

ただ、キセノンについてはライト通販専門店・アカリセンターさんがブログの『SUREFIRE 6P キセノン』の記事で以下のように書いているので引用させていただいた。

キセノンに関して言えば現状「ロマン」以上の性能はありません。

引用元 http://akaricenter.blog.jp/archives/52188131.html

小説版モルダー捜査官──。
彼は局へ復帰する前に、心機一転、近所のウォルマートへ走って新しい懐中電灯を買ったり、レビュー評価の高い最新モデルを注文したり──そんなことは絶対にしない。

20年物のライトを今も大切に使い続ける。
それがモルダー。

FBIの支給装備である最新型LEDタクティカルライトには目もくれず、
この時代にあっても、あえてロマンを追い求め、
古き良きキセノンライトを手放さない。
それがモルダー。

しかも、局の経費は湯水のように使い、経費監査で怒られて逆ギレして監査官を殴るくせに、
自分のモノには異様なまでに愛着を持つ。
それがモルダー。

……そもそも、モルダーのライトは私物だったのか?
それとも、官給品をポケットにしまいこんだまま、
油田事件の責任を取って依願退職したのか?
──謎が謎を呼ぶ。(いや呼んでない)

一方、スカリーはというと。
産休でXファイル課を一時的に離れる際、
デスクの引き出しを整理しながら、
モルダーから誕生日プレゼントにもらったアポロ13号のキーホルダーや、
想い出の私物、そして懐中電灯を、しみじみとした表情で持ち帰っていた。

──どうですか、皆さん。
たかが懐中電灯一本にまで込められた、製作側の心理描写の細やかさ、巧みさ!
こういう「ニヤリ」とする細部の積み重ねが、
Xファイルを特別な作品にしているのだと、筆者は思う。

冗談抜きに言うと、
いまだにストリームライト社などでキセノンモデルが販売され続けているのは、
キセノン光源を必要とするプロフェッショナルがいるからだ。

LEDライトは、霧や雨の中では光が乱反射して「光の壁」を作ってしまうが、
キセノンは透過率が高く、遠方まで照らしやすい。
そのため、悪天候時や火災現場の煙の中で活動する消防士たちには、
今なお必須のツールとなっている。

──ひえっ。


というわけで、小説版シーズン10では、
モルダーとスカリーが使っている懐中電灯も、実はテレビ版とは違っている。

映像作品では、
爆光LEDライトのほうが断然映える。
しかし、読ませる小説では、携行品一つにさえ重みを持たせることができる。

だからこそ、
モルダーが20年前から使い続けている、思い出が詰まったキセノンライト──。
それが、彼のポケットに、今も青白い光を灯しているのだろう(実際に肉眼で見るとオレンジなのだが)。

たしかに、フェニックスTK22みたいな大型タクティカルライトをスーツのポケットに入れるのは無理がある。
明るさでは劣るが、スマートなスコーピオンのような細身のライトを選ぶほうが、現実的だ。

──かつて、捜査でいつも手にしていた懐中電灯。
復職したモルダーは、また「サイドキック」として活躍させてやりたかったに違いない。

ライトマニア諸君、モルダーを見習おう。
(いや、まずはオマエだろ。次々にライト買って飽きてオークションで売るなよ)

ちなみに、ドラマ版モルダーが使っているLEDライトは、
中国系の有名メーカー製。
だからまあ、そういうわけで──

Xファイルとは、こういう世界だ。

・趣味の悪いネクタイ
・ポケットに忍ばせたキセノンフラッシュライト
・ノキア製のCellularphone
・捜査官バッジ
・腰にはシグ・ザウアー(P228)
・足首にはワルサーPPK/S
・移動はレンタカーのフォードセダン(支局の覆面は使わない)
・モーテル宿泊は当然男女別室(FBI内規厳守)
・土曜日も登庁するモルダー
・豆腐アイス+蜂の粉で健康管理するスカリー
・モリスから譲り受けたウォーターベッドでアパート水浸しにするモルダー

──これ。

そして、
2016年版・2018年版でモルダーたちが使っているライトについては、
また別途紹介していく。

『Xファイル』2016年版で登場したライトの機種が判明!詳しく解説します!