SEIKO SNA411P1 パイロットクロノグラフ

SEIKO 腕時計 QUARTZ CHRONOGRAGH
クオーツ クロノグラフ SNA411P1

■秒針の向こうに滑走路が見える──SEIKO SNA411P1という名のクロノグラフ

たとえば、退屈な日常を抜け出す方法として、SEIKOのSNA411P1を選ぶのは悪くない選択肢だ。

誰もがスマートウォッチをいじくり回す中、こいつは航空計算尺付きのアナログクロノグラフ。液晶も通知もない。

だがそのぶん、回す感触、押すクリック感、時間を読むという行為そのものに「男の逃避行」が詰まっている。

SNA411P1──通称「Flightmaster」。名前のとおり、空と親しい。もちろん本物のパイロットがこれを使って飛んでいるわけじゃない。でも、カタチとしてのロマンは完璧に近い。

ベゼルには航空計算尺、インナーダイヤルには3つのサブカウンター。ブラックダイヤルにゴールドの針と数字が鋭く刺さるそのデザインは、どこか『2001年宇宙の旅』のコクピット計器のようで、機能性という名の美学をまとっている。

ムーブメントはSEIKOの信頼のクォーツ、Cal. 7T62。誤差はわずか数秒単位。

だが、精度の話はこの時計の本質ではない。これは合理性で身を包んだ「少しの不便」を楽しむための装置だ。ちょっと重く、ちょっとゴツく、そしてちょっと古い。でもその「ちょっと」が、今の時代では逆に稀少だ。

このモデルは、もう国内正規ラインにはない。つまり新品で手に入れるには少し裏道を歩く必要がある。eBayや海外通販で探す。それもまた、SNA411P1の持つ「少数派の哲学」に通じている。

この時計をしていると、ちょっとした喫茶店の窓際で「この角度、関空のRWY24Lに似てるな」なんて空想ができる。

あるいは、電車の中でスライドルールをくるくる回しながら、燃料計算ごっこに興じる。スマートさとは別の「ひねくれたクール」がそこにある。
もちろん、僕らがこれを使うことなんてない。この計算尺は、ただの飾りである。

最後にひとこと。
このSNA411P1が似合うのは、腕元に少しだけ余裕と孤独があるやつだ。