最近、とある有名人が「消費税は格差を是正する最強の仕組み。撤廃すれば格差は爆速で広がる」とコメントし、ちょっとした話題になっている。
その人は岸谷蘭丸氏。岸谷五朗の長男である。
岸谷蘭丸氏のの「消費税は格差是正システム、撤廃すれば格差爆速拡大」という主張に対して、反論や批判の声が大きくなっている。
岸谷蘭丸氏の主張は、 「消費税は格差を是正する唯一の仕組み」 と断定するには極端であり、実情とは大きく異なるとの指摘が多数存在する。
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制度的には、累進税や支出の再配分によって調整することが重要であり、消費税はその手段の一つに過ぎない。
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単純な廃止論では格差解消には逆効果ともなりうるため、慎重な議論が不可欠である。
なるほど、確かに高所得者だろうが低所得者だろうが、一律の税率で徴収されるという意味では「公平」に見えるのかもしれない。
でも、ちょっと待ってほしい。生活費の中で消費が占める割合は、収入が少ない人ほど大きい。つまり、10%の消費税は、年収200万円の人には重くのしかかるが、年収2000万円の人にはさほど痛くない。この「逆進性」こそが、長らく批判されてきたポイントだ。
さらに、法人税減税や高所得層の優遇策が並行して進められている現状を見ると、「消費税で格差是正」というロジックには疑問符がつく。消費税がなければ社会保障が成り立たない? それならまず、富裕層や大企業への課税強化を検討するのが筋ではないか。
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2025/06/10/kiji/20250610s00041000240000c.html
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「消費税=格差是正」論に潜む落とし穴──岸谷蘭丸氏の発言を考える
「消費税ほど格差を是正する仕組みはない」。岸谷蘭丸氏のこの発言は、一見インパクトが強く、なるほどと思ってしまう人もいるかもしれない。だが、冷静に考えてみよう。
「一律課税=公平」か?
たしかに、消費税は誰に対しても同じ税率が適用される。だが、その一律性こそが逆に不公平さを生む原因になっている。たとえば、年収200万円の人と2000万円の人が同じ10%の消費税を負担した場合、生活支出に占める税の割合は明らかに前者のほうが大きい。これが「逆進性」と呼ばれる問題である。
つまり、形式的には平等でも、実質的には低所得者層の負担が重くなっている。格差を縮めるどころか、むしろ可処分所得の差を拡大させている可能性すらある。
なぜ「格差是正」と言えるのか?
岸谷氏のように「格差是正」と評価する立場には、再分配によって税収が福祉などに回ることを前提にしている場合が多い。だが現実はどうか。消費税が導入された1989年以降、日本では一貫して法人税率は引き下げられ、富裕層への優遇措置が拡大してきた。財政赤字を埋めるために消費税が使われ、社会保障の拡充という目的からは逸脱しているのが実態である。
富裕層に対する課税強化を避けていないか?
そもそも、「格差是正」が目的であるなら、なぜ富裕層や大企業への累進課税を強化しないのか? 国際的にもトレンドとなっている「富裕税」や「デジタル課税」などの議論が、日本では極端に遅れている。結果、弱者から広く浅く集めるというスタイルだけが強化されている印象が拭えない。
ポピュリズム的な言説としての危うさ
今回の岸谷氏のように、著名人が「消費税は素晴らしい」と強調することで、複雑な制度設計の是非が単純化され、批判が封じられてしまう危険性もある。こうしたポジショントークが一種の「思考停止」を生み出し、必要な議論から国民の目を逸らしてしまうことはないか。
消費税で格差はなくなるの?
◎たとえばこんな例
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Aさん(年収200万円)とBさん(年収2000万円)が同じ100円のジュースを買ったとする
→ 消費税10%だから、どちらも10円の税金を払う。
→ でもAさんにとっての10円と、Bさんにとっての10円って、重さが全然ちがうよね?
Aさんにとっての10円は、1日の食費を削るくらいの痛み。でもBさんなら、たぶん気づきもしない金額。
こういうのを「逆進性(ぎゃくしんせい)」って言って、お金の少ない人のほうが負担が大きくなる仕組みである。
◎「本当は富裕層にもっと税金を払ってもらうべきでは?」
もし格差をなくしたいなら、たくさんお金を持っている人から、少し多めに税金を取る仕組み(累進課税)が本来のやり方。でも、今の日本では大企業やお金持ちへの税金はだんだん下げられていて、消費税で国のお金を集めているんだ。
◎じゃあ「消費税で格差がなくなる」はウソ?
完全なウソではないけど、「そうなる前提があるなら」という条件つきの話。たとえば、
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消費税で集めたお金が、本当に弱い立場の人のための支援に使われていれば…
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社会保障(医療、福祉、年金など)がちゃんと機能していれば…
でも実際には、赤字の穴埋めや、むしろお金持ちを優遇するために使われている。
だから、「消費税で格差をなくせる」と聞いたときは、こう考えてみよう。
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だれにとって「平等」なのか?
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ほんとうにそのお金は困っている人のために使われているのか?
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お金持ちや企業の負担は減っていないか?
まとめ
「それっぽい言葉」や「わかりやすいスローガン」にだまされず、しくみの中身や使われ方をよく見ることが大切だ。
もちろん、著名人が経済や税制について意見を述べること自体は自由だし、歓迎すべきだと思う。でも、その影響力を考えれば、もう少し視点の多様性に配慮した発言があってもよいのでは。そんなことを思った。