SUREFIRE G2Xシリーズの各機種の違いを解説

屋内ならともかく、さすがに野外で200ルーメンでは足元を照らして歩くのですら頼り無い。

とは言っても、数年前まで200か300ルーメンそこらのライトで満足していたものなのだが。

今となっては最低でも400ルーメン以上の出力がなければ、確かな安心感を得ることは難しい。

そこでSUREFIREのエントリーラインとも呼ぶべき廉価なG2Xシリーズがおすすめ。

その魅力に迫る。

SUREFIRE G2Xシリーズとは

さて、近年ではFENIXなど中国ブランドの台頭に危機感を抱きはじめつつも、揺るぎなき地位と未だ衰えぬ人気を持つSUREFIRE。

同社製品はアメリカ製というアドバンテージを維持しつつ、エントリーモデルの価格帯をグッと下げてきてくれたことも久しい。

パッケージに関してはLedlenserに軍配が上がるだろう。シュアファイヤの安っぽいブリスターパッケージはマグライトと同様。

ではそのSUREFIREのG2Xシリーズとは。

アカリセンターさんによれば、G2Xはフルアルミ製のSUREFIRE 6PXの樹脂モデルバージョンとのこと。

もともとは旧モデルにG2という樹脂モデルのラインがあり、G2Xはその後継。

そしてG2XシリーズはSUREFIREがリリースする1インチ径のボディを持つパーソナルシリーズの中でも最も廉価で入手しやすい実用的な製品群。

なお、アカリセンターさんによれば、6PXシリーズのうち、6PX PROは将来的にG2X PROに統合され、6PX TACTICALのみのラインナップとなるそう。

SUREFIRE 6P絶版後の現在はLED化された6PXが後継機種

G2Xシリーズの3機種はそれぞれ何が違うのか?

さて――
熱血アウトドアマンたちの頼れる相棒、G2Xシリーズの話でもしようか。
ラインナップはというと、民生用のG2X Pro、タクティカル仕様のG2X Tactical、そして法執行官向けのG2X LE、この3兄弟だ。

さて、これら3種の具体的な違いだが、結論から言うと、現行モデルではそれぞれの機種で調光モードの順序が違う。

G2X Tacticalはクリック・スイッチ方式で600ルーメンのみ。

G2X Proはクリック・スイッチ方式で15ルーメン→600ルーメン。

G2X LEはクリック・スイッチ方式で600ルーメン→15ルーメン。

では、この調光モードの順序にどんな意味があるのか。

それは後述し、その前にリニューアルに伴う仕様変更について記したい。

最初に世に出たとき、ProとTacticalは200ルーメンだった。まあ、控えめってやつだな。
その後、ProとTacticalは320ルーメンにパワーアップ、LEはさらに400ルーメンにブースト。
そして2018年現在、どいつもこいつも600ルーメンってわけだ。頼もしいねえ。
夜の森を歩こうが、悪党の顔を炙り出そうが、もう向かうところ敵なしさ。

このG2Xシリーズ、頭の部分には往年の名機6Pと同じく、航空機用アルミを使用。
でもって、ボディはというと、SUREFIREお得意の「NITRLORON」っていう特殊ポリマー。
寒風吹きすさぶ2月の夜に握っても、手がキンキンに冷えないってわけ。
ありがたいじゃないか。

外見? 3モデルともパッと見はほぼ同じ。
だけどヘッド横に刻まれた文字が違う。
Proには「D」、Tacticalには「C」、そしてLEには……そう、「LE」の文字が刻まれてる。

ちなみにこの「LE」ってのはLaw Enforcement、つまり警察官や捜査官たちのことだ。
悪党相手に睨みをきかすための、プロフェッショナル仕様ってわけ。

G2Xのベゼルは流行のストライクベゼルではないが、ギザギザの『ローレット加工』が。

樹脂製かつ鋭利なものではないので、単にデザインだろうが、職質の警察官に口実を与えかねない懸念はぬぐいきれない。

全長こそ短く、マグライトの様に金属筐体でもないので軽犯罪法違反になることはないとは思う。

【個人的な見解】タクティカルライトは違法で検挙される場合がある?

600ルーメンへのリニューアルで、G2X TACTICALに大幅な仕様変更が加えられた

※スイッチの仕様については2018年に600ルーメンへとアップグレードされた際の仕様変更で、それまでモメンタリー・スイッチ仕様だったTacticalがクリック・スイッチ方式に改められ、現行のG2Xシリーズはすべて同じクリック・スイッチ仕様となった。

600ルーメン版が出たと聞いて、じっとしていられなかった。
筆者――いや、俺はアカリセンターのサイトに飛び込んだわけだ。

そこで見たG2X TACTICALの新モデル。
……妙な違和感を覚えた。
テールスイッチが、どう見てもPro版と同じじゃないか。
しかも商品説明には「クリックスイッチ」って書いてある。
――あれ? タクティカルってもっと無骨なモメンタリーじゃなかったか?

不思議に思った俺は、アカリセンターさんに直撃してみた。
すると向こうは、あっさり答えてくれた。

「600ルーメン版のProとTactical、見た目はヘッドの刻印以外まったく同じです」

なるほど、そういうことか。
これまでの320ルーメンまでのG2X TACTICALは、6P譲りの信頼性抜群なモメンタリースイッチだった。

だけど――
600ルーメンにアップグレードされた新型からは、フォワード・クリッキースイッチに仕様変更。
押し込めばカチッと点灯するタイプに変わっちまったってわけだ。

まぁ、シュアファイヤ社としてもコストダウンを狙ったんだろうな。
テールスイッチをProと共通化して、製造ラインをすっきりまとめる。
それはそれで合理的な判断ってわけだ。

でも――合理的なだけじゃ、ロマンは生まれないんだぜ。

(ニヤリと笑いながら、G2Xを片手に夜の散歩へ向かう俺)

G2X Proの後部にあるフォワード・クリッキー・スイッチ。カチッと押し込んで点灯消灯できるが、半押しでも点灯可能。ボディ側面のパーティング・ラインはやや目立つ。廉価な製品ゆえに妥協すべき点か。

クリッキースイッチのメリットと欠点

シュアファイヤ製品には、『押している間だけ点灯し、指を離せば消灯する』仕様のモメンタリー・スイッチと、『カチッと音がするまで押し込めば、指を離しても点灯状態を維持できる』仕様のフォワード・クリッキー・スイッチがある。

一般的なホムセンライト(家電ライト)では間違いなく、クリッキースイッチ。

では、指で押し続けていないと点灯しないモメンタリー・スイッチのメリットとは。

指で押し続けていないと点灯しないモメンタリー・スイッチおよび常時点灯可能なテールスイッチのツイスト方式を採用している6P。

モメンタリースイッチってのは……押してる間だけ光る。
指を離せば、即、消灯。

使いにくい? いや、とんでもない。
ミリタリーやSWATの連中には、これがたまらなくありがたい。

夜の作戦じゃ、ONとOFFを素早く切り替えなきゃ話にならない。
カチカチ無駄な音を鳴らすわけにもいかないしな。
忍び寄るSWATが、スイッチの音で正体バレました――なんて、シャレにならないだろ?

その点、モメンタリーなら静かに、そして速く。
影の中を動くプロフェッショナルには、うってつけってわけさ。

……ところが、だ。
クリッキースイッチってヤツが出てきた。
押し込んでパチンと点灯、便利っちゃ便利。

もっとも、今のG2Xシリーズは全部、半押し点灯ができる。
軽く親指で押すだけ。ハイとローの切り替えも半押しでOK。

親指を離せば、即・消灯。
つまり、モメンタリーとほとんど同じ感覚で扱えるってワケだ。

カチカチ音も要らない。
こりゃあ、モメンタリーが時代遅れ扱いされるのも、無理はない。

だが――
世の中そう簡単にはいかないもの。

アカリセンターさんによると、フォワードクリッキースイッチにも欠点がある。

フォワードクリッキースイッチでも同様の操作自体は可能ですが、実際に使用すると誤って押し切ってしまい、クリックがかかって消灯しないなど、ストレスがかかった状況では一段劣る部分がございます。 引用元 http://akaricenter.blog.jp/archives/52259845.html

――油断すると、やらかすわけよ。

半押しのつもりが、カチッと最後まで押し込む。
そんな失敗を、俺も何度かやった。

「慣れ」の問題?
まあ、確かに。
だが、一般人俺たちが日常生活で間違えてもいいが、法執行官や軍人の世界じゃ、装備品に「慣れ」だの「うっかり」だのはない。

一回のミスが、命取りに。

だからこそ、モメンタリースイッチが完全に消え去る未来は想像できない。

……それに、クリッキースイッチは、そもそも部品が擦り減る。

毎日カチカチしてりゃ、いずれスイッチが音を上げる。

モメンタリーに比べりゃ、摩耗はする。

ただし――
普段から半押しだけで使ってりゃ、消耗も最小限に抑えられる。
スマートに、静かに、そして長持ち。
これがプロの流儀ってやつさ。

そう、半押し点灯。

日本のホームセンターで売られてる安物ライトじゃ、こんな芸当はまず無理だ。

レッドレンザー?
ああ、いい名前だ。
ドイツ製だが、日本ではジェントスが取り扱ってる「通好み」だ。

廉価版でも半押し点灯を搭載してるあたり、なかなか分かってるじゃないか。

LEDLENSER レッドレンザーP7.2レビュー

G2Xはどの機種を買うべきか

まず、一般的なユーザーの『日常的な使用』と特定職種の『公務中の使用』における両者のライトの運用方法を比較しよう。

法執行官がSUREFIREを持つ理由とは何か。

言うまでもなくその強烈な芯の太いスポット光によって対象者、とくに襲い掛かってこようとする者の目に瞬間的に強い光を浴びせ、視力を一定時間奪い、それによって相手を怯ませ、その行動を抑制するためだ。

つまり、法執行の現場で求められるライトは押し込んだ一発目が常に最大光量であれ、というわけ。

押し出し一発で常時600ルーメン、そして2クリック目で違反切符を切る際などに使い勝手の良い15ルーメンの低出力モードに切り替えられるのが、法執行官向けのLEというわけ。

LEは一般の人でも日常使用と緊急時のセルフ・ディフェンス的な使い方をしたいという場合におすすめできるモデル。

ただし、セルフディフェンスとはいってもライトを暴漢の顔に向けて光による幻惑で直接視力を奪うような法執行機関職員が行っている本来の運用方法を民間人が行うことによるその護身効果には、筆者は懐疑的。

筆者が想定しているものはそうではなく、あくまで夜間、不審者が近づかないようにあらかじめ強力なライトの光で周囲を照らし、周辺警戒に努めるような運用を想定している。

これについては最近流行のトゲトゲいわゆるストライクベゼルの考察についても書いた。

一方、15ルーメンの低出力モードは不要で、必ずどんな状況でも600ルーメンの大光量で照射してくれるほうが安心感があるとか、600ルーメンの大光量を相手に浴びせて文句言われても黙らせる国家権力を持っている……という場合は600ルーメン・オンリーのTacticalがおすすめ。

Surefire自体、もともと法執行機関用の非致死性武器「目潰し用ライト」というコンセプトなのだから。

ただし、600ルーメンで手元や足元を照らしたい場合はSurefire特有の強烈なスポット配光によって、対象物が白く消失してしまうので、日常生活では使いにくい。

逆に、600ルーメンのハイパワーも欲しいが、高価なcr123電池を節約したい場合は押し出し一発目で必ず15ルーメン、2クリック目で600ルーメンになるProがおすすめ。

このようにG2Xシリーズでは、それぞれのモデルで調光モードの順序が違う。

ただし、上記のいずれのモデルも配光パターン自体は同じで光の伸びは文句なし。

320ルーメンモデルを夜の海岸で目いっぱい使ってみたが、公称値183メートルまで芯の強いビームが飛んでいく。

ただ何度も言うが、目潰しコンセプトであるがゆえにハイモードではスポットが強すぎて、手元や足元などを照らす場合は使いにくい。

現行の600ルーメンモデルならなおさらだろう。

法執行用目潰しライトは本来、日常生活で使おうとすると苦労するので、やはりハイ&ローの両モードを搭載したLEかProをおすすめしたい。

なお、G2Xには近年、G2X with MaxVision (G2X-MV)というモデルもラインナップ。

JRも車両内での不審者対策として近年、G2X with MaxVision (G2X-MV)を導入している。 https://asaiyamania.com/g2x-with-maxvision-g2x-mv/