この記事は2026年6月現在で42,833語、読了時間227分です。覚悟してください。
1993年にアメリカで放送が始まった『Xファイル』。
本作を象徴するアイテムはいくつもあるが、その筆頭に挙げられるのが、モルダーとスカリーの手に握られたライトだろう。
彼らの捜査現場は、なぜかいつも薄暗い。廃屋、地下施設、人気のないモーテル、霧に包まれた森――。その闇の中で頼りになるのは、手元のフラッシュライトが放つわずかな光だけだった。
モルダーとスカリーは、闇夜に潜む真実を追い求め、数え切れないほどの不気味な場所へ足を踏み入れてきた。フラッシュライト片手に廃屋を探索し、ぬかるんだ森を進み、何が潜んでいるのか分からない暗闇へと躊躇なく踏み込んでいく。
その光が照らし出した相手も実に多彩だ。人間の容疑者はもちろん、宇宙人、そして一体どこの伝承から現れたのかも分からないUMA(未確認動物)まで。光の先には毎回のように、常識では説明できない何かが待ち受けていた。
考えてみれば、『Xファイル』とは「闇を照らす物語」だったのかもしれない。
もっとも、本作の概要について今さら長々と説明する必要はないだろう。『Xファイル』そのものについては、以下の記事で(比較的真面目に)詳しく解説しているので、そちらをご覧いただきたい。

90年代中頃、そんなモルダーとスカリーの活躍に胸を熱くした視聴者も少なくなかっただろう。
部屋の電気を消し、テレビの前に陣取る。片手にはひまわりの種。もう片手には懐中電灯。そして、お好みでタナカのP226やP228まで用意すれば、精神的にはもうFBI捜査官である。
暗闇の中でテレビ画面だけが浮かび上がるあの時間は、確かにモルダーとスカリーの捜査に同行しているような気分にさせてくれた。
「いらない何も、捨ててしまおう」──日本放映時の主題歌として強烈な印象を残したB’zの『LOVE PHANTOM』も、どこか当時の『Xファイル』ブームを象徴していたように思う。
あの歌は何もかも捨てろと訴えかけてくるが、不思議なことに、四半世紀以上が過ぎた今でも私の脳内からは一向に捨てられていない。
さて、今回はそんなモルダーとスカリーの捜査に欠かせなかった“もうひとりの出演者”とも言うべき存在、懐中電灯(フラッシュライト)にスポットを当てたい。
彼らが手にしていた鋭い光は、単なる照明器具ではなかった。暗闇の向こうに何かが潜んでいるかもしれないという期待と不安を演出し、『Xファイル』特有の緊張感を支える重要な小道具だったのである。
もっとも、懐中電灯はドラマの演出道具にとどまらない。地震や台風、近年増加している大雪による停電などを考えれば、防災用品としても極めて実用的な装備だ。
筆者も非常時に備え、それなりの準備を整えている。
SUREFIREのフラッシュライト。ひまわりの種。そしてハローキティ防災ずきん。この三位一体の防災システムにより、停電への備えと精神的安定を確保する。
きゅっ。
静寂に響く、防災ずきんの顎紐を締める音。
ママーッ!
──というわけで、ここからは『Xファイル』を彩ったフラッシュライトの世界について、実際に劇中で使われたモデルや、当時の技術水準にも触れながら解説する。
シーズンを重ねるごとに、そのライトは進化を遂げていく。小型化しながらも、出力は向上。
つまり、より小さく、より明るく、よりタクティカルに。この変遷は、懐中電灯というアイテムが単なる小道具ではなく、物語の進行とキャラクターの在り方にすら関与していたことを意味している。
そして時は流れ、2016年の『Xファイル』リブート版の舞台に現れたフラッシュライトは、昔のものとはひと回り大きく、そして何よりも決定的に「別物」になっていた。
かつてのキセノンバルブはすっかり影を潜め、光の主役はLEDへと完全交代。これはもはや、光源テクノロジー史における小さくない革命だ。
LEDのおかげで光はぐんと明るくなり、電力は節約、発熱も控えめ─おまけに電池の持ちも延びるというおまけつき。
要するに、これはまさに「文明の勝利」と呼ぶにふさわしい瞬間である。
モルダーがFBIを自ら退職し、兵士殺害の嫌疑をかけられて逃亡し、その後失踪、復帰、スカリー宅への引きこもり、宇宙人特化SNS運営で生計を立て(嘘です)、最終的にスカリーのヒモ化を経て孤独に生きるまでの13年。その間に、ライトはとんでもなく進化していたのだ。
ともあれ──モルダーとスカリーが劇中で使ってきたフラッシュライトについて、その変遷をシーズン登場順に追っていきたい。
──懐中電灯とひまわりの種のご用意をお忘れなく。
なお、この記事では批評および研究上必要であることから、日本国の著作権法上で許された引用の条件に則り、Twenty-First Century Fox, Inc.作品『Xファイル』から典拠元を示した上で複数の画像の引用を行っております。
『Xファイル』のライト その1『Maxa beam』
シーズン1でとくに出番の多かったのが、とても巨大でごついやつ、いまや四半世紀前の懐中電灯ながら、まだまだ現役顔負けの出力を誇る伝説の一灯──Maxabeam。
懐中(ふところ)に入る電灯どころか、これは誰が見ても軍用・海難救助用サーチライトである。
その名も、マックス12,000,000 CandlePower!そう、1,200万カンデラですよ。12メガカンデラ。

暗い森や、ウサンくさい研究施設の闇を切り裂いて探るモルダーとスカリーの手にはいつもMaxa beam。画像の典拠元 『Xファイル』 (C) Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
まず、そのサイズ感。スーツのポケットなんぞに入るわけがない。
まるで「ポケットにミカン入れてきた」くらいの感覚で語るには、あまりにも無理がある。
何しろこいつ、重さ約4キロ。持って走れば腕がパンパン、肩にかければ狙撃されかねない存在感。
しかしこの巨体、ただの重しではない。
中にはなんと75ワットのキセノンランプが搭載されており、最大2キロ先までの遠距離照射が可能という圧倒的パワー。
闇夜の森どころか、谷向こうの幽霊屋敷の屋根裏までフル照射できるレベル。ぶっちゃけ捜査用というより、ほぼほぼ……ゆ、UFO迎撃…用?
参考動画はこちら: 👉YouTubeで暴れる12,000,000 CandlePowerライト
そんなMaxabeamがどれほどヤバいかというと、あの映画『ジェラシックパーク』にも登場していることでお分かりいただけるだろう。
そう、T-レックスすら立ち止まって「うおおおおっっっ!」って唸るレベルの光の咆哮である。もう「ライト」じゃない。これは「光害」。迷惑防止条例に引っかかりそう。
ちなみに、Xファイルのシーズン1でモルダーが愛用する拳銃グロック19は、フル装填でもわずか850グラム。つまり、Maxabeam=グロック約5丁分の重量。

モルダーの腰にグロック、左手にMaxabeam持ってたら、もう完全に光と弾丸の二刀流だ。強すぎるぞ。
ついでに言うと、日本のお巡りさんも、東京オリンピックの警備限定で「グロック45」を試験的に導入していたらしい。これは9ミリ口径ながらもグロック19サイズのコンパクトスライド、つまり威圧感バッチリの都会派グロックである。ちょっとモルダーごっこできるな。

さて、そのおそるべきMaxabeamが活躍するのが、『Xファイル』シーズン6の第13話、あの湿気100%、海洋ホラー回として名高い『アグア・マラ』である。
このエピソード、舞台はフロリダの嵐の夜。停電したアパートの中で謎の“水系モンスター”が人々を襲い、ヌルヌルした絶望感が全編を覆う中、モルダーとスカリーは光を手に捜査を開始。
だがそこで我々は目撃する。
マクサビーム、屋内でガンガン点灯。
照射距離2キロのライトでアパートの廊下を照らす姿に、「遠慮って概念はないのか……!」と視聴者は感動すら覚える。
しかもあの狭い家の中で、あんなデカブツを両手で構えて捜索する姿。
室内灯完全無視の光のイカれっぷり。
まさに、電池代の概念を捨てた男と女の物語、FBI支出監査課のひと出てこいやコラア!というガチの税金の無駄遣い。
さらに、現地の保安官が持っているのはおなじみのマグライト(これもなかなかの照度)。
そしてチョイ役のキャラが持つ小型ライトも合わせて、この回はまさにライト博覧会でしたね。
いやー、なんか俺の握ってるものも熱を帯びてきたわ。ライトだぞ。
ちなみにスカリーのライト姿だけを集めたマニアックすぎるサイトまで存在するから驚き。
その名も:Scully’s Flashlight Photo Gallery
ここまで来ると、人類は光を持った女に惹かれ続ける運命なんだと思うしかない。
というわけで、懐中電灯がただのツールじゃなかった時代。それは信仰、そしてロマンだった。
モルダーの片手にはグロック19、もう一方には神の雷光マクサビーム。
『Xファイル』のライト その2『マグライト』
いま、闇を照らす使命を再び君の部屋へ。……照らしすぎ注意!まだまだ続く。
シーズンが進むにつれ、Xファイルはよりスケールの大きな物語を描くようになり、撮影技術も洗練され、予算も増えていった。
……のだが。
しかし、どうしてもあの初期の粒立ちの良さ、光るディテールたちが、徐々に薄れていくのを感じずにはいられない。
そう、我々が愛したのは単にUFOや怪物だけじゃない。
捜査官たちの腰にぶら下がる“あの一本”だった。
何を隠そう、Xファイル初期の象徴的プロップと言えば、MAG INSTRUMENTS社製マグライト(MAG LITE)である!
ちなみに、MAG LIGHTじゃないから注意だ!「LITE」。軽量の“ライト”の方だ。※でも本体は全然軽くない。むしろ重い。
特にあの伝説の第3話「スクイーズ」では、モルダーとスカリーが単一電池仕様のゴツいマグライトを構えてピンナップみたいな決めポーズ。
あれはもう、犯罪捜査というより、MAG INSTRUMENTS社カタログ写真の領域だった。
いま、闇を照らす使命を再び君の部屋へ。……照らしすぎ注意!まだまだ続く。
モルダーとスカリーが携行するマグライト。3-Cell CかDだ。見てのとおり、長くて重い、携行しにくい、そんなに明るくないともなれば、あまり手にしたくないものだが、モルダーとスカリーはシリーズ1において、とにかくマグライトを愛用していた。繰り返すが、支給品で仕方なく使用せざるを得なかった。画像の出典 『Xファイル』 (C) Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
ちなみにマグライト、全長約30cm、重量は電池込みで約700g。
180cmのモルダーでさえ、背広のポケットに入れるのは無理ゲー。
スカリーに至っては、ハンドバッグにもギリ入らん。
だがそれでも、当時は彼らの姿に憧れて、「あれ欲しい!」と全国のオタクが「鈍器ホーテ」の懐中電灯売り場に走った。
「こんなに重いのか……!」と戸惑いながらも、なぜか嬉しい。この鈍器で宇宙人が出たらいつか殴るんだ。そう決めた夜の公園でなぜか職務質問された。
その無骨なボディ、軍用でも通じる堅牢性、警察官たちにも愛され、そして今もなお進化を続けて、LED版もリリースされているという、懐中電灯界のレジェンド。ただし、付属電池がクソすぎて、それを使うと膨らんで抜けなくなるという世界共通の罠があるので注意だ。
思わず、「いらない何も、捨ててしまおう」と歌いたくなる。
なお、MAG社の創業者アンソニー・マグリカ氏は、製造を中国へ移さないポリシーでも知られ、その理由と製品哲学については以下の記事が参考になる……。

結局のところ、シーズン1におけるモルダーとスカリーのマグライト愛というのは、ただの趣味ではなく、時代と予算と支給品というリアルの中にあった“必然”だったわけだ。
実際当時、マグライトは警察や軍隊から圧倒的に採用率が高く、FBIの二人が使っていても違和感はない。
だからこそ、彼らが懐中電灯を構えて廃墟や森を照らす姿には、「怪事件を照らし出す」以上に、「当時のアメリカのプロップ美学」すら見て取れる。
そしてその光は──
25年後の今も、我々の記憶の奥底でほのかに灯り続けている。
ビーム、オン。
マグライト――それは懐中電灯の名を借りた、もはや鈍器のような存在感である。
中でも「D CELL 6」モデル。
もうこれは懐中電灯というより、金属製の棍棒に近い。
重さ1.5kg以上、長さ50cm超え。
太く、重く、固く、そして…用途が懐中電灯に限定されていない。
「他の用途って何よ?」と聞かれれば、本記事では詳しくは書かないが、
90年代にロサンゼルスのニュースを見ていた人なら、即座に思い出すはずだ。
そう、1991年のロドニー・キング暴行事件。
ロス市警(LAPD)が装備していたマグライトが、暴行の道具として使用されたという忌まわしい記録が、
マグライト=“光の道具”というイメージを一変させた。
この事件はアメリカ中に衝撃を与え、1992年のロサンゼルス暴動へと発展。
その反省から、ロス市警では大型マグライトの貸与を中止し、代わりにペリカン製の軽量ライトを導入。
こうして、マグライトは社会的意味まで背負うプロップとなってしまった。
さて、そんな物騒な背景を持ちながらも、ここで気になるのが彼らの携行方法である。
当時の大型マグライトは法執行機関で広く使用されていたものの、その多くは車載運用が前提だったと考えられる。
モルダーとスカリーも、ワシントン近郊での捜査であれば捜査車両から持ち出していたのだろう。
一方、『Xファイル』では全米各地への出張捜査も珍しくない。そうした場合はスーツケースに収納して持ち運んでいたか、あるいは現地支局や協力機関の装備を借用していた可能性が考えられる。
もっとも、劇中ではそのあたりの事情が描かれることはなく、謎のひとつなのである。
そんな、悲しくもリアルなFBI捜査官たちの経費精算攻防戦については、別記事にてディープに語っているのでぜひそちらもどうぞ。

◤第12話『害虫(War of the Coprophages)』見せ場はマグライト
夜のモルダーのロマンスとライト事情。
この回は、ロマンチックで哀愁漂う冒頭から始まり、
バカバカしくも不気味な事件の連鎖へと突入していく、
Xファイル初期のスリラーとシュールという傑作構成のひとつ。
その中でモルダーが持っていたたった一本のマグライトが、
彼の性格――孤独で、執着的で、そして用意周到な変人ぶりを物語っている。
まさに「備えあれば嬉しいなマグライト」。
懐中電灯ひとつで語れてしまう、そんなXファイルの懐の深さ。
モルダーにとってのマグライトとは――
『僕にとって懐中電灯とは、暗闇を照らす道具ではなく、真実に突入する“意志”の象徴なのかもしれない。』
出典 『ある元・FBI捜査官の回顧録〜宇宙人に妹を拐われて…』
(ただし、不法侵入はやめましょう)
◤「消毒だから出てけ」→即、夜のドライブ強行。
DCにある、とあるアパートが“害虫駆除”を理由に住民へ一時的な退去を促した。
その瞬間、住民の一人であるモルダーさん(部屋番号42…)はこう思ったはずだ。
「これは星を見るチャンスだ」
(普通の人はモーテルへ行ったついでに怪しい姉ちゃん呼びます)
――ということで彼が向かった先が、マサチューセッツ州ミラーズグローブ。
いつもの「わ」ナンバーです。ラリアットレンタカー。
しかも、丘の上に車停めて一人で深夜の空を見上げる。
モルダーの、静かでちょっと切ない浪漫主義が全開になる瞬間です。
◤用意周到すぎる休日装備。
で、そこからなぜか巻き込まれていく“ゴッキー騒動”。
モルダーが興味本位で侵入した家屋で、彼が使用していたのが――
MAGLITE 2-CELL Cモデル。
長さ約25cm、単二電池2本仕様で、ちょうど「休日でもギリ持ってきてる感」がリアル。
これより長いDセル6だったら「これから一緒に殴りに行こうか」って感じだし、
逆にLEDミニだと頼りなさすぎる。
さらに驚きなのが――ピッキングツールまで持参。
休日にピッキングツール。
これ、日本なら建造物侵入+特殊開錠用具所持等の禁止に関する法律違反で、即座に逮捕されて取り調べですよ、ええ。
で、モルダーはスカリーと携帯で通話をしながら家屋に不法侵入。
いわゆる、僕はFBI特別捜査官だから非番中に興味本位で公的施設に侵入しても違法性は阻却されるものと解されていますってやつだ。
これら彼の不法行為の数々が積み上げられ、後に捜査局からの追訴につながってしまうのはご愛嬌だ。解されてねえし何がご愛嬌だ。どこの県警だよ(笑)
◤スカリーとの通話&ライト片手に突入する男。
携帯でスカリーと通話しながら、
もう片手には例のマグライト。
どんな状況?
・真っ暗な無人の家
・通話は切らず
・不法侵入状態
・懐中電灯で壁を照らす
この「通話しながら懐中電灯で照らしてる感じ」、
見てるこっちが不安になる絶妙なリアリズム。
そして、彼が照らした壁の下から――
さざめくような壁紙の動きとともに、
「何か」が蠢き出す。
そう、これがこの回のテーマ、
“得体の知れない生き物=ゴキ(ただし超常的)”。
しかもこの回、全編通して演出もトーンも妙にコメディ寄りで、
真面目な顔をしたモルダーがライト片手に笑いと恐怖の境界線をウロウロしてる。
それにしても、サイズの割に暗いのはさすが95年当時のマグライト。まあ、10センチくらいの至近距離で壁を照らすならさほど暗くもないが、周囲の暗さがまた不気味……。画像の典拠元 『Xファイル』s3 ep12『害虫』 (C) Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
マグライトの光に誘われるようにして、壁の中からゴキブリがワラワラと湧き出してきた……。
神経質な人間なら卒倒ものの光景だが、そこはFBI捜査官モルダー、ギリギリの精神で耐えていた。
だが次の瞬間、なんという皮肉だろう、よりによってそのマグライトの電池か、あるいは電球が切れてしまうという緊急事態。
まさに絶望の闇に包まれたその瞬間、彼の口から悲鳴とも叫びともつかぬ言葉が飛び出す――『スカリー、ンゴッ、ゴキブリだあっ!……フォウッ!懐中電灯が切れたっ……!』。通話先のスカリーはさぞかし驚いたに違いない。
とはいえ、彼女は「だからマグライトの電球は切れやすいんだから、捜査に行く前に毎回交換しておけって言っただろうが!」とは怒鳴らず、冷静だ。
ンゴッ!だが、その直後、モルダーはあっけらかんと『あっ大丈夫、もう切るよ』と電話をガチャぎり。スカリーの心中は察するに余りある。
モルダーの危機を救ったのは農務省の研究者であるバンビ・ベレンバウム。その名も印象的な彼女は、政府の害虫研究施設の職員で、本人いわく昆虫フェチ。
美人かどうかは見る人によるが、どうやらモルダーのツボには直撃だったらしく、彼女の話にはやたら饒舌だったのが記憶に残っている。
そして夜も明けないうちに、モルダーから再度の連絡。なんとモーテルの宿泊客が死亡したという。、スカリーはついに重い腰を上げ、モルダーの捜査応援のために緊急出動。
D.C.のジョージタウンにある彼女の自宅から、架空の町マサチューセッツ州ミラーズグローブまで、約300キロ――。稚内から網走くらいあるぞ……なんだ近いのか。…お前、どこ住んでんだよ。
いずれにせよ、さっきまで自宅でアイスを食べ、犬を洗い、拳銃の手入れ(火薬カスふきふき作業)までこなしていた非番のスカリーが、自分で車を運転して現地へ向かったというのだから、実に頭が下がる。
せめてヘリでも飛ばせば……と思うが、その許可を局から得るには、まずモルダーのゴキハウス不法侵入を正当化しなければ。ミキハウスじゃねえんだから。
一方で、マグライトといえばフルサイズのCやDセルタイプが象徴的だが、実際の現場ではその出番はそう多くない。
彼らが常用するのはおそらく15センチ前後の小型モデル「MINI MAGLITE」で、コートのポケットに収めて日常的に持ち歩く、いわゆるEDC(Every Day Carry)用途。
おそらく車両には3-Cell CかDを常備しつつ、ポケットにはミニマグ、というのが彼らの標準装備だろう。スカリーはさらに検視も担当するため、ペンライトの類も必需品。
つまり彼女は用途によってライトを二本持ちしているはずである。ミニマグは照射範囲こそ狭く、明るさも当時でおそらく10ルーメン程度だが、それでも当時は優れた小型ライトだったことに違いない。
筆者愛用のSUREFIRE G2X LEのローモードが15ルーメンであることを考えると、彼らの暗闇での作業がいかに過酷だったかがよくわかる。今さらながら、あんな光量でよくあれだけ突撃できていたなと感心するばかりである。

season1のFile No.21 (1X21) 「輪廻」 BORN AGAINでは、モルダーとスカリーが民家突入時にミニマグをかざしていた。ビームが良く伸びていてカッコイイ。もちろん撮影用のスモークマシンあっての魅惑的な演出である。
こちらはハリウッド血液バンクの地下を探索する「給料計算会社のモルダーと言います」さん。画像の典拠元 『X―ファイル』シーズン2第7話『トリニティ』 (C) Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
ミニマグを手にしたモルダーが、ハリウッド血液バンクの地下を探るシーンが登場するのは、シーズン2の第7話『トリニティ』。あの時、鋭いビームが闇を切り裂く様子が印象的で、ミニマグが果たしてその場面において、どれほど効果的に役立ったのかを感じさせてくれる。モルダーが使ったのはおそらく、単三電池2本仕様の2AAだろう。
当時のマグライトは、クリプトン球を使用していたため、照射が暗く、どうしてもダークスポットが目立ってしまう。
これがまた、作品の雰囲気を一層オカルトチックに仕上げる要因となったとも言える。後にキセノン球やLEDに進化し、明るさと均一な照射範囲が改善されたものの、初期の不安定で頼りない光が、かえって作品に奇妙な不気味さを加えていたのは間違いない。
その不完全さが、モルダーやスカリーが向き合うオカルト的な状況にぴったりとマッチしていたとも考えられる。
あの小さな光が照らし出すのは、明るさではなく、不確かで謎めいた世界の一端。そうした暗闇の中で繰り広げられる捜査の緊迫感を作り上げた要素として、マグライトの「頼りない光」が重要な役割を果たしていた。
逆に、シーズン中盤から登場した警察用の高出力で小型のキセノンライトが、モルダーとスカリーの捜査能力を向上させたことは否定できないが、その明るさが逆に初期シーズンの持つ独特の雰囲気を壊してしまう危険性もあったかもしれない。
最新のLEDライトに至っては、あまりにも明るすぎて、時には作品に与える影響があまりにも現実的すぎるかもしれない。
それでも、最初の頃のマグライトは、作品における不可解さや不安感を引き立てるために不可欠だったと言えるだろう。実際、初期のモルダーとスカリーが活用していたマグライトは、照射能力には限界がありながらも、その「頼りない光」によって作品に独特の味わいを与えていたのだ。
『Xファイル』のライト その3『Underwater Kinetics SL4』
シリーズが中盤になると、重たくてかさばるマグライトと併用する形で、アンダーウォーターキネティクス社製の小型軽量ライトSL4をポケットに忍ばせるようになった彼ら。
画像の典拠元 『X-files』 シーズン3第21話 「 Avatar (化身) 」(C)Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
シーズン3第21話「Avatar(化身)」では、警察の押収車コーナーでスキナーの車を調べるモルダーとスカリーの姿があるが、注目はその装備。なんとモルダー、ちゃっかり折り畳みナイフまで所持している。もはや何を想定してんだよ。
非番でもフル装備か。で、スカリーが手にしているのが『Underwater Kinetics SL4』という全長15センチほどのダイビング・ライト。海中仕様。現場は陸だが。たぶん光量と信頼性で選ばれたのだろう。
上の画像は近親婚一家を描いた「ホーム」より。こちらはモルダーが持つUnderwater Kinetics SL4の細部がくっきりとわかるベストショットだ。こう見ると結構平べったい感じがして軍用ライトっぽいね。バッテリー容量も大きそう。でも落とすとパリーんといきそう。画像の典拠元 『X-files』 (C)Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
本来、ダイビング用水中ライトであることから、非常に実用的な懐中電灯。クリプトン球のマグライトに比べるととても明るく、ヘッド全体から漏れる光が周囲を照らし出し、エルビス・プレスリーが42歳で死んだこともわかってしまうほど(実際はどこかで生きてると大部分のアメリカ人は信じている)照射範囲がとても広いのだ。
樹脂製でいかにも軽そう。色は各カラーあり。ポケットにギリギリ入れて持ち運びしやすそうなサイズなのもgood。
このSL4、シーズン3第22話「ビッグブルー」では、スカリーが愛犬クイークェグを連れて現地捜査にやってきた際にも使用。夜の散歩時に片手にリード、片手にライトという“夜の母親”スタイルで、湖畔をうろうろする姿が見られる。
ついでにこの回、クイークェグが湖畔で行方不明になるというトラウマ展開。
さらにシーズン5第11話「KILL SWITCH」では、重要参考人の女性ハッカーが身を潜める港のコンテナハウスへの突入シーンで再登場。突入から制圧、周辺捜索まで、たびたびこのライトを使用している。
耐衝撃性と耐水性に優れた業務用のライト、まさにスカリー的セレクト。彼女の本気装備には無駄がない。
で、最後に思い出したのがシーズン4第20話「スモール・ポテト(Small Potatoes)」。
ここでのモルダーは、ズボンの右ポケットから例のライトをスッと取り出すという“分かってる感”全開の動作。ちょっと照れ臭そうな表情もまた良い。彼のEDC(Everyday Carry)は本当に隙がない。というかFBIの捜査官ってここまで自由装備なのかよ……。
結構、Xファイルでは登場回数の多い、息の長いライトである。
そして、お次はモルダーとスカリーがついに持ち出した小型強力な次世代型ライトをご紹介したい。
モルダーとスカリー、マグライトを捨て、ついに強力な警察向け戦術ライトを使う
ついにその時がやって来た。モルダーとスカリー、長年付き合ってきたマグライトやらダイビングライトやらに別れを告げ──いや、むしろ「そろそろ重いから限界だよな」と無言で置いてきた感すらある──ついに強力な戦術ライト、いわゆる「タクティカルライト」を手にし始めたのである。
時は90年代中盤。アメリカの警察や軍の世界で「ルーメン?高ければ高いほど偉いっしょ!目ぇ潰すっしょ!」的なノリで、ハイパワーLEDやキセノンライトがガンガン導入されていた頃である。そんな時代の風を受けて、『Xファイル』もたしかシーズン5か6あたりか。
モルダーとスカリーの手元から、あのクラシックで無骨なライトの姿が、徐々に姿を消していく。
そして代わりに彼らのポケットからチラ見えしはじめたのが、2種類のピカッと光る新時代の光源。家屋の中でも地下室でも不気味な納屋でも、暗闇での捜査力がアップグレード。もう光が弱くて「ライトが切れた!ンゴッ!」なんて言わなくていい。まさに捜査スタイルのアップグレードである。
まず一本目は、旧・レーザープロダクツ社(SUREFIRE)時代の名作、「SUREFIRE 6P」。
これ、当時のタクティカルライト界隈では“デフォルト装備”みたいな存在で、CR123Aリチウム電池2本仕様、アルミボディ、そして「うわっ、眩しっ!」なハロゲンバルブ搭載。
約60ルーメン。今見たら「え、60?ローモードじゃん」とか思うかもしれないが、当時はこれでも革命だったのだ。
それに何より──モルダーがスッとポケットから取り出して、無言でピカッと照らすあの動作。スカリーが無駄に精密にライトを構えて、資料棚の裏を探るあの光。
これぞ新世代捜査官の風格である。オカルトは追ってるけど、ライトだけはガチ。そんな時代が、ついに『Xファイル』にも訪れたのであった。
『Xファイル』のライト その4『SUREFIRE 旧型6P』
90年代中盤、SUREFIREのパーソナル・ハンドライトは法執行機関や軍隊がこぞって導入した。

スカリーがおもに愛用
スカリーは懐中電灯の伝説を作ったSUREFIRE社(旧・レーザープロダクツ社)の6Pを使用。
画像の出典 File No.604 How The Ghosts Stole Cristmas 「クリスマス・イブの過ごし方」より(C)Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
旧型6Pは側面のロゴもなく、ヘッドのデザインも現行モデルとは異なっている。
『Xファイル』が制作された1990年代前半を考えると、SUREFIREの存在は決して新しいものではない。代表的なタクティカルライトである6Pは1980年代から登場しており、法執行機関向け市場でも徐々に知られ始めていた。
もっとも、当時の警察機関全体にどの程度普及していたのかとなると話は別である。少数精鋭の捜査官や特殊部隊員の間では早くから評価されていた可能性はあるが、1990年代初頭の時点で広く一般化していたとは言い切れない。このあたりは筆者も現在調査中の分野である。
さて、ここからは少々マニアックな話になる。
1990年代後半、FBIアカデミーの卒業生やSUREFIREが実施していたトレーニングプログラムの参加者には、記念品としてG2Zコンバットライトが配布されていた。後にLED化されてG2ZLへ発展するモデルだが、卒業記念として和英辞典を渡されるより、こちらの方がはるかにうれしい。なんで中学校の卒業記念品感覚なんだよ・・・。
まあ、そう考えると、FBIきっての変わり者コンビであるモルダーとスカリーも、どこかの時点でSUREFIREの講習会に送り込まれていても不思議ではない。
もっとも、モルダーの場合は受講生として参加したはずが、途中から講師相手に「現場ではそうじゃない」と持論を展開し始め、最終的には特別講師扱いになっていても違和感がないのだが。
しかし興味深いことに、そんな本格派のイメージを持つ二人でありながら、劇中で拳銃とライトを組み合わせたいわゆる「Harriesテクニック」を披露する場面は意外なほど少ない。
記憶している限りでは旧シリーズ全体を通しても数えるほどしかなく、むしろ2016年のリバイバル版になってからの方が、現代的なタクティカルライト運用を意識した描写が増えたように見える。
考えてみれば、『Xファイル』の捜査対象は銀行強盗や武装犯よりも、宇宙人や怪物やUMAである。
銃とライトを完璧に連携させる訓練よりも、「暗い森で突然現れた何かから全力で逃げる訓練」の方が重要だったのかもしれない。
さて、懐中電灯ファンにとっての神回とも言えるのが、シーズン7のエピソード「ゴールドバーグ(The Goldberg Variation)」である。
物語はなかなか衝撃的な場面から始まる。
幸運にもマフィア相手のポーカーで勝ち続けてしまったマンション管理人ヘンリーが、報復としてビルの屋上から突き落とされるのだが、ここまではよくある犯罪ドラマの導入部。
しかし、現場に駆け付けた捜査官らが目にしたのは、あるはずの死体ではなく義眼だけだった。
「落ちた人間が消えた」
実に『Xファイル』らしい幕開けである。
そして懐中電灯マニアにとって重要なのはここからだ。
現場を調べるスカリーが、ポケットから取り出したSUREFIRE 6Pを点灯させる場面がある。
しかもこれが妙にしっかり映る。
特徴的な1インチ径のボディ、短く太いフォルム、わずかに突き出たテールキャップ。そのシルエットは6Pを知る人なら一目で分かるレベルだ。
さらに面白いのは点灯方法である。
スカリーは単純にテールスイッチを押すのではなく、テールキャップを回して常時点灯状態にしている。
ほんの数秒のシーンなのだが、「実際に使っている感」が妙にある。
もちろん制作スタッフの誰かが6Pを愛用していたのか、たまたまそうなっただけなのかは分からない。
しかし、こうした細部を見つけてしまうと、懐中電灯ファンとしてはどうしてもニヤリとしてしまう。
その後、モルダーとスカリーは唯一の手掛かりである義眼を追い、被害者ヘンリーが管理人を務めるアパートへ向かう。
そこで待っていたのは住民からの生活相談だった。
「水道のバルブが閉まらないんですけど……あなた、ひねってくださる?」
普通の捜査ドラマなら管理人を呼ぶ場面である。
しかし、困っている市民を前にしたモルダー捜査官は嫌な顔ひとつしない。
むしろ「まあ見てみましょうか」という雰囲気で引き受けてしまう。
未確認生命体の捜査から水道修理まで。FBI捜査官の業務範囲がどこまでなのかは謎だが、少なくともモルダーの担当業務に「地域住民との信頼関係の醸成(ふれあい)」が含まれていても不思議ではない。
というわけで、スーツ姿でレンチを手に、颯爽とキッチンのシンク下に潜り込むその様子は、もうほぼ“クラシアン”。傍らで腕を組みながら『クックック……』と小声で笑いをこらえるスカリーの表情……あいつ…あの目。
……しかし、そのまま事態は思わぬ方向へ。モルダー、なんと水道管のバルブを力任せに締めた結果、逆に人間火力発電所みたいにうおォンとぶっ壊す。
漏水により脆くなっていた床板が崩れ、そのまま階下に落下するというクラッシュ・オブ・ザ・年末特番。
尾てい骨を強打して床下でうずくまるモルダーを、スカリーがSUREFIRE片手に上階の穴から照らしながら、呆然とも苦笑ともつかない顔で見下ろす──という名場面が誕生するのであった。
ちなみにこのときスカリーが使っていたのは、旧型SUREFIRE 6P。点灯時にテール部分を“ひねって”オンにしているのだが、そのシーンではなぜか「カチッ」という結構大きめの音が響く。
──次。SUREFIRE愛好家が見逃してはいけないのが、シーズン6・第15話「スイート・ホーム(Arcadia)」。このエピソードでは、モルダーとスカリーが夫婦を装って“理想郷”と謳われる高級住宅街に潜入するという、いわば「スパイごっこ夫婦ごっこ」の回。
だが、そんな設定もどこ吹く風で、しれっとSUREFIREを投入してくるあたり、この作品やはり抜け目がない。
ある夜、近隣住民の飼い犬が逃げ出して側溝に潜り込んでしまうハプニング発生。そこでスカリーが迷いなくポケットからSUREFIREをシュッと取り出し、さっと側溝に光を滑り込ませて犬の居場所を探る。
この一連の動きの自然さ、もはや「捜査用具としての懐中電灯」が完全に体に馴染んでいる証左といえよう。というか、誰よりも光の使い方が“刑事っぽい”の、いつだってスカリーなんだよな……。
その傍らでは、ポケットからSUREFIREをスッと取り出すスカリーを、飼い主の主婦が「……何この人。なんでそんなゴツい懐中電灯がポケットから出てくるの?」みたいな顔で見つめているのがまた妙に印象深い。
たしかに、あのシルエットでいきなり側溝にライトを突っ込んだら、ただの住人にしては違和感すごい。これはもしかして、彼女が“ただの奥さま”ではないと感づく伏線か?──などと深読みしたくなる、妙にリアルな間合いの一幕。
このシーンでも、スカリーが旧型6Pのテールスイッチをひねって点灯させる際、やはり「カチッ」という明瞭なクリック音が。
ここまで来ると、音の演出は意図的なのかもしれない。それ現実の6Pだと鳴らないんですよねえ。テールスイッチを回しても“無音”。そもそもこのライト、SWATや捜査班が「無音で忍び寄る」ことを前提に開発されてる。
なお、旧6Pもオリジナルも共通して、スイッチ方式は2通り。ひとつはご存知、テールを回して常時点灯。
そしてもうひとつが、テールのボタンを押し込んでいる間だけ光る“モーメンタリー・スイッチ”だ。用途や状況に応じて使い分けられる、まさに“戦術ライト”たる所以。
ちなみにこの側溝ライト捜索シーン、SUREFIREマニア的には見逃せないディテール満載。たとえば、ヘッド前方に刻まれたナーリング(滑り止めの凹凸)、ヘッド後端の急激な角度変化、そして何より、本体テールからほんの少し突き出したスイッチ・ボタン──これらの特徴、どれをとってもSUREFIRE旧6Pと完全一致。まるで製品カタログの参考映像かというくらい、ライトのフォルムが画面でしっかり確認できるのだ。
……が、惜しむらくは、スカリーがSUREFIREを使用するシーンはこの回を含めても数えるほどしかないという点。非常に貴重である。
一方、モルダーは?というと──意外なことに、モルダーがSUREFIREを使用している場面は、シリーズ全体でも確認できたのはほぼ一例のみ。
それが、season6のエピソード「File No.604:How The Ghosts Stole Christmas(邦題:クリスマス・イブの過ごし方)」。幽霊屋敷に乗り込んだ二人が、モルダーの「プレゼント(=心霊現象)」を“検証”するために奮闘するあの一夜限りの珍作である。以下の画像を見れば、モルダーの手元にあるライトの形状がSUREFIREそのものだということが一目瞭然。
これにより、晴れて(?)モルダーのSUREFIREユーザー認定が下ることになったのである──なんだか嬉しいような、もっと出番があってもよかったような。
画像の出典 File No.604 How The Ghosts Stole Cristmas 「クリスマス・イブの過ごし方」より(C)Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
『Xファイル』のライト その5『STREAMLIGHT SCORPION』

STREAMLIGHT(ストリームライト) 懐中電灯 スコーピオン
さて、前述したseason7『ゴールドバーグ』の話の続きになるが、ここではスカリーがSUREFIRE旧6Pを使用して現場検証を行っていたのに対し、モルダーはというと──違うライトを使っていたのが実に興味深い。
アパート内で、かくれんぼのように姿を消したヘンリー氏の行方を追うシーン。モルダーは室内の壁に開いた穴を覗き込んで探索しているのだが、ここで彼が手にしていたのはStreamlight社の“Scorpion”。
画面に映るのはライト本体の半分だけ。だが、テールスイッチが見当たらない点、そしてあの特徴的なラバーボディの造形──この2点を押さえれば、“Scorpion”であることはほぼ確定。
そして注目すべきはその扱い方。モルダーは調査を終えると、テール部分を「カチッ」と押し込んで電源を切り、そのまま無造作にポケットへ突っ込む。あのラバーボディ、確かに滑りにくく、衝撃にも強い仕様だ。無造作に扱われてもスーツを傷つけることはない──が、ポケットの中がゴム臭くなるのは避けられなさそう。
ちなみにScorpionは、SUREFIRE 6Pと違ってサイズもややコンパクトで、携帯性に優れる点が特長のひとつ。グローブを着けた状態でも操作しやすいし、滑りにくいのは屋外・雨天での運用にも強い。モルダーのように“現場でひらめく”系の捜査官には、こうした気軽さも重要なのかもしれない。
こうして見てみると、SUREFIREを丁寧にカチッ(鳴りません)と操作するスカリーと、Scorpionをラフに扱うモルダー──それぞれのキャラクターと持ち物の関係性が、何とも絶妙なコントラストを生んでいるのが面白い。道具の選び方ひとつ取っても、その人となりが見えてくる。

さらに、series7 第9話『神のお告げ』(Signs & Wonders)でも、モルダーとスカリーの使用するStreamlight Scorpionがかなりの頻度で活躍。
二人は教会に通う信者の奇怪な死の謎を追う過程で、密売人のたまり場になっている麻薬ハウスや、蛇を多数飼育している神父の屋敷へと足を運ぶ。
このとき、モルダーは颯爽とポケットからScorpionを取り出し、暗がりに潜む「何か」を探る。一方のスカリーも同様にScorpionを使いこなす姿を見せ、まさに二人にとっての“標準装備”であることがうかがえる。
そして第12話『Xコップス』では、ロサンゼルス郡保安官局のシェリフたちが重厚なマグライト(おそらく当時のキセノン球モデル)を構え、ギャングの家に突入する一方で、FBIのモルダーとスカリーは、やはり軽快にScorpionを選択。
マグライトの威圧的なシルエットと対照的に、ポケットサイズのScorpionを指先で軽やかに構えるスカリーの姿──その差は技術革新を象徴しているかのようだ。
もちろん、警察官が「長い金属製の懐中電灯」を使うのには理由がある。護身用の即席バトンとして機能することも想定されているからだ。重量感も信頼性のうちというわけである。
また、コメディ色の強い異色作、第19話『ハリウッドAD』では、モルダーとスカリーに密着取材するハリウッドの映画監督が登場。監督自身が超常現象を目の前にしても冷めた視点を保ち続けるリアリストという点で、シリーズにおけるメタ視点の象徴的存在だ。
その教会地下での探索シーンでは、モルダーがScorpionで空間に光の筋を描きながら、まさに“いかにもドラマティック”に捜査を進める。この照明演出そのものが、まるで映画のワンカットのようで見応えがある。
なお、このエピソードと、6-13『アグア・マラ』(Agua Mala)において、モルダーとスカリーは懐中電灯本体を口にくわえて使用するシーンがある。
これは一般的な金属筐体のライトでは考えにくいが、Scorpionのラバー外装ならではの柔らかさとグリップ性能ゆえに可能な所作だ。
LEDライトでもなく、強すぎない光量、適度なサイズ、口に含める太さと素材──全てが、この懐中電灯の“道具としての完成度”を物語っている。
エピソードの締めでは、映画化された劇中劇の試写会に、モルダーとスカリー、そしてスキナー副長官までもが招待される。
フィクションが現実を追いかけ、現実がフィクションを追い抜く──そんなメタな構造に仕立てられたこの一編においても、やはりStreamlight Scorpionは、小道具でありながらキャラクターの一部として確かに機能していた。
ところで、この『映画』では、ゾンビたちを倒したモルダー役とスカリー役の2人が、丘を転げて棺おけに入ってしまうシーンで以下のようなやり取りが。
スカリー役女優『これは懐中電灯なの?モルダー……。それとも私の上に乗ってゴキゲンなのかしら?』
モルダー役俳優『僕の懐中電灯だ。ああ……そっちね』
試写会の会場では、モルダーがスクリーンを見つめているうちに、ついには顔を伏せてしまう──まるで「最悪だ……」とでも言いたげなその表情は、捜査の現場を忠実に再現したはずの劇中劇が、あまりにも“ハリウッド的な誇張”に満ちていたことへの苦笑いとも取れる。
対してスキナー副長官は、眉をひそめるどころか、むしろ興味深げにスクリーンを眺め、口元にはうっすらと笑みを浮かべていた。
ほう、あの「報告書を明日の8時までに提出しろ!」といつもの彼が、どこか「ま、これはこれで……」という大人の余裕を感じさせる。
そして肝心のスカリーはというと──彼女の反応は控えめながらも、微妙な表情に全てが表れている。
あからさまな否定はしないが、どこか「しょうがないわね……でも、ポケットの中の懐中電灯が大きくなったりしないわ。そんなの絶対おかしい。科学的にありえない。モルダー、ねえ、なんとか言っ…寝てるわこいつ!」とでも言いたげ。心のうちでは複雑な感情が渦巻いていたに違いない。
試写会の後、3人はなんと高級ホテルの泡ぶろで、それぞれ優雅なバスタイム。これもスキナーの粋な計らいによるもので、「経費は局のカードでいい」との一言に、思わずモルダーも脱力。すごいわFBI。
だが皮肉なことに、このささやかな贅沢が、後の監査でモルダーの立場を不利にするという結果を招くことになる。カーシュ長官代理の就任後、FBI内部の風向きは一変し、Xファイル課の動向にも厳しい目が向けられるようになるのだった。
……いや、まさかこれもスキナーの戦略的な布石だったのでは? スキナーが静かに何かを見据えていたとすれば、この展開もまた一興だ。
ドゲット捜査官登場
モルダーの失踪後、season8にてXファイル課に新たに配属されたのがドゲット捜査官である。
硬派なNY市警出身の彼は、当初スカリーとの間に明確な緊張関係を持ち込むこととなる。
その初対面のインパクトたるや──スカリーから紙コップの水をかけられるという洗礼を受けるに至った。
さらに、モルダーとの対面でも悲劇は続く。モルダーは「あんたがドゲットか」と声をかけた直後、ドゲットが差し出した握手の手を一瞥すると、容赦なく彼を突き飛ばす。
この瞬間、視聴者の心にも「ドゲたん、かわいそう……」という思いがよぎったことだろう。だって、モルダー発見の尽力を尽くしたのは彼なんですよ。
だが、そのドゲットが後に捜査中にスカリーの命を救ったことで、スカリーは次第に彼を信頼し、パートナーとして認めるようになる。
そして、あの印象的なシーン──デスクに鎮座していた「FOX MULDER」のネームプレートを、スカリーが静かに引き出しにしまうあのカットには、彼女の内面に生まれた覚悟が込められていた。
ストリームライト・スコーピオンの系譜
『爪痕』のエピソードでは、ドゲットが屋根裏を探る際にライトを構えながら「懐中電灯は?」とスカリーに尋ねる。
だがスカリーは、一瞬だけ言葉に詰まり、「……持たない」と答える。この一見何気ないやりとりの裏には、モルダーの不在を意識する彼女の葛藤がにじんでいるように感じられる。
なお、このシーンの真意については、2016年に刊行された小説版で明かされる“心の奥底”が参考になる。
実は別項にて書いたバンドエイド・ノーズマンの回について、X-ファイル 2016小説版(クリス・カーター・著/竹書房・刊)では小説版Originalとも言える興味深い描写があったので、ご紹介および批評をしたい。
竹書房公式サイト http://www.takeshobo.co.jp/book_d/shohin/6031702
こちらの小説は『X-FILES X-ファイル2016』のエピソード全話を完全小説化とのことで、テレビ版の後に小説化されたもの。
小説版『バンドエイド・ノーズマン』のエピソードにもテレビドラマ同様、トラッシュマンが潜む廃墟の地下へ捜査のために侵入するモルダーとスカリーのシーンがあるが、その場面において以下のような描写がある。
批評のため、第三者コンテンツより一部分を出典を明記した上で引用した。引用した部分については一切改変せず、引用タグで囲み、明らかに当サイト運営者の書いた記事と区別ができるように配慮を行い、著作権法の引用の条件に合致するよう努めた。
「なんだよ?あの坊やを撃ったりしないよ。それに僕はもう、階段を駆け上がって追いかける年齢じゃない」
「私も、昔は踵九センチのハイヒールで階段を駆けあがったわ」
「昔はね。それじゃ、また、昔のようにやろうか」モルダーは、かつて捜査の時によく使っていたのと同じ懐中電灯のスイッチをオンにする。
おなじみの青白い光が辺りを照らす。モルダーは、この懐中電灯を今でも捜査の必需品として、常に携帯しているのだ。すると、スカリーも自分の懐中電灯のスイッチをオンにする。もちろん、スカリーも携帯している。
スカリーはちょっと自慢そうな顔をする。それを見たモルダーは、思わずニヤリとする。
ふたりはさらに階段を降りていった。引用元 X-ファイル 2016 VOL.2 著者: クリス・カーター(竹書房・刊)
いやあ、すばらしい。Xファイルファン、とりわけ劇中小道具マニアなら、この描写に思わず唸るはず。
映画版と違い、小説版のモルダーは『かつて捜査の時によく使っていたのと同じ懐中電灯』を今でも常に携行し、捜査に活用しているのだ。
懐中電灯一本に込められた、モルダーの捜査(おしごと)にかける情熱。
そして、その小さな光を共有することで生まれる、モルダーとスカリーのパートナーとしての共通認識。
クリス・カーター、さすがである。わかってらっしゃる。
こちらも思わずニヤリとせずにはいられない。
思い出すのは1997年、あの日。
FBIのチームワーク研修会に参加するため、モルダーとスカリーは同僚捜査官たちと一緒に、たぶんラリアットレンタカー社のレンタカーに乗って移動していた。
しかし道中、事件に遭遇。モルダーは「こんなのに巻き込まれたら研修なんか行かなくて済むぞ」とばかりに、地元警察の捜査にズカズカと首を突っ込むのであった。
そしてその現場で、図らずも(!?)モルダーに便宜を図り(!?)、
『ほら、何も言わなくてもわかり合えるじゃないか。僕らにはチームワークの研修なんか必要ないだろ』
とドヤ顔で言われたスカリー。
スカリーもまた、わかってらっしゃる。
さらに時は流れ、モルダー失踪後。
新たな相棒ドゲット捜査官との活動中に、ドゲットから『懐中電灯は持ってないのか?』と聞かれたスカリー。
『あーん……持たないっ!(キリッ』
と即答した彼女。
その瞬間にこめられた彼女の気持ち──いわばモルダーとの共通アイテム──を、わかる者だけがわかればよいのである。
こういう演出が心憎い。まったくもって心憎い。
ところで気になるのは、よく言われる『モルダーがかつて捜査の時によく使っていたのと同じ懐中電灯』って、一体どれのことを指すのか。
諸説あるが、有力なのはマグライト(Maglite)社製の、3Dセルモデルあたりか。
持つとわかるが、これ、けっこう重い。
殴打武器にもなるレベルの頑丈さで、そりゃあ現場で頼りになるわけである。
いや、違うだろ(笑)
https://blog.amateurmusenshikaku.com/x-files-flashlight/
とりあえず、でかいマグライトとマクサビーム(初期に使っていたサーチライトみたいなヤツ)は除外する。
2AAのミニマグ(ゼノン球)はともかく、スーツのポケットに入らないので。
クリスマスイブなど限定的に数回だけ使用していたSUREFIRE 6Pか?
いやいや、お前もなかなか白々しいな。Xファイルのライトと言ったら、ストリームライト・スコーピオンだろう。

おそらく彼らがよく使っていた、というか中盤以降から依願退職までずっと捜査で愛用してきた青白い光を放つ強力な懐中電灯と言えば、これである。
まあ、いずれにせよどちらかのライトだろう。下の画像は当時ライバルっぽい関係であったSUREFIRE 6p とのツーショット。
どっちだったんだろうなあ。
そこはクリス・カーターもいちいち説明するのがめんどうだったのだろう。
商品名とか軽率に書けないご時世だし、
「キミらで勝手に想像して妄想しろ」ってスタンスだったのだと思う。
そういう計らいも、ファン心をかき立てるのである。
ところで、モルダーが使っていたと噂されるスコーピオン。
あれ、ゴムスリーブ仕様だからどうしてもボロボロに劣化するのだ。消耗品扱い。
モルダーは在職中、何回ゴムを交換したのだろうか。
まあ、予算潤沢なFBIのことだ、いちいちゴム交換なんてしないで、ライト本体ごと支給されていたに違いない。
……たぶん。
でも最近は、連邦政府も赤字続きだって言うじゃな~い。あっ、これ、占い屋のジリンカおばちゃんのセリフだった。
モルダーが局のビジネスカード(たしかゴールドだったような?)で占い料金を払おうとした、あのとき。
その瞬間、モルダーがぐぬぬってなったやつ。可愛い。
ちなみに、現実でも2018年から2019年の正月にかけて、アメリカ連邦政府はマジで予算不足になり、
大部分の連邦職員が無給で働くか、自宅待機を命じられていた。
もちろんFBIも例外ではなく、現場捜査にガンガン支障が出たらしい。
アメリカ、すげーな。
モルダーは昔から捜査費の無駄遣いを指摘されていたけど、
ああいう捜査官、実はたくさんいたんじゃないのか。
──話を戻そう。
筆者はというと、調子に乗ってスコーピオンをいじり倒していたら、
買って半年でゴムスリーブがブニョブニョになった。こんな感じで。
日本フラッシュライトチャンネル様
http://www.lightch.com/other/scorpi.html
ともかく、小説版モルダーとスカリーは、いまだにキセノンのフラッシュライトを現場で使っている可能性が高い。
ひえー。
いつぞやのゴキハウス突入時みたいに、マグライトのバルブが切れるという恐怖がまた再来するかもしれない。
ちなみにトークショーでは、スカリー役のジリアン・アンダーソンが、
「キセノンの懐中電灯」や「でかい携帯電話」といった当時のアイテムを茶化していたらしい。
笑うしかない。
いや、モルダーがSurefire 6p(旧)にLEDバルブを入れて、LED仕様にしている可能性もあるぞ。それはねえよ(笑)

小説版モルダー捜査官──。
彼が局へ復帰するにあたって、
「よし、心機一転、新しいライトを買いにウォルマートへ!」
──などと考えるわけがない。
レビューサイトで「おすすめLEDライト!ベスト10!」みたいなのを比較検討したり、
アマゾンでポチったりするような男ではないのだ、モルダーは。
20年前に手に入れたあのキセノンライトを、
ポケットにそっと忍ばせ、今なお愛用している。
モルダーはモノ持ちが良いのである。
そして、FBI装備部から最新型の「LEDタクティカルライト」が支給されても、
モルダーは「……フッ」と鼻で笑い、手に取ることもせず、
おもむろにポケットから、使い慣れたキセノンライトを取り出すのだ。
ロマン。
あくまでロマンで生きる男、それがモルダーである。
ちなみに、モルダーのライトが「私物」だったか、「官給品」だったか。
これはなかなか謎である。
もし官給品だったなら──
油田事件の責任を取って依願退職した時、
官給品のライトを、こっそりポケットに入れたまま持ち帰ってしまった可能性もある。
(ある意味、モルダーらしい雑さだ)
一方、私物だったとしたら──
あの懐中電灯は、モルダーが自分のこだわりで選び、
大事に、ほんとうに大事に、
長い時を一緒に過ごしてきた「相棒」なのだ。
それに対してスカリー。
産休でXファイル課を離れるとき、
デスクの引き出しを整理しながら、
モルダーから誕生日にもらったアポロ13号のキーホルダー──
あれやこれやと思い出の品を手に取る彼女。
そして、
「……これも」と、しみじみとした表情で、懐中電灯をカバンに入れる。
これ、最高じゃないですか。
懐中電灯一本に込められた、二人の絆、時間、想い。
Xファイル製作陣の細やかな心理描写、本当に、絶妙です。
さて、冗談抜きの話。
いまだにストリームライト社などで「キセノンライト」がラインナップに並んでいる理由。
それは、キセノン光源が特殊な職業のプロたちに、今でも必要とされているから。
LED光源は確かに省エネで長寿命だが、
霧や雨の中では乱反射しやすく、
自分自身の光で「光の壁」を作ってしまう。
それに対して、キセノンは──光の透過率が高い。
だから悪天候や火災の煙の中でも、
しっかりと遠くを照らし続けることができる。
この特性が必要とされる現場──それは、消防士。
悪天候や火災現場での救助・捜索活動に、キセノンライトは今なお欠かせない存在なのだ。
ひえっ。モルダー、結果的にプロ仕様。
さすがである。
ただ、キセノンについてはライト通販専門店・アカリセンターさんがブログの『SUREFIRE 6P キセノン』の記事で以下のように書いているので引用させていただいた。
キセノンに関して言えば現状「ロマン」以上の性能はありません。
引用元 http://akaricenter.blog.jp/archives/52188131.html
小説版モルダー捜査官──。
彼は局へ復帰する前に、心機一転、近所のウォルマートへ走って新しい懐中電灯を買ったり、レビュー評価の高い最新モデルを注文したり──そんなことは絶対にしない。
20年物のライトを今も大切に使い続ける。
それがモルダー。
FBIの支給装備である最新型LEDタクティカルライトには目もくれず、
この時代にあっても、あえてロマンを追い求め、
古き良きキセノンライトを手放さない。
それがモルダー。
しかも、局の経費は湯水のように使い、経費監査で怒られて逆ギレして監査官を殴るくせに、
自分のモノには異様なまでに愛着を持つ。
それがモルダー。
……そもそも、モルダーのライトは私物だったのか?
それとも、官給品をポケットにしまいこんだまま、
油田事件の責任を取って依願退職したのか?
──謎が謎を呼ぶ。(いや呼んでない)
一方、スカリーはというと。
産休でXファイル課を一時的に離れる際、
デスクの引き出しを整理しながら、
モルダーから誕生日プレゼントにもらったアポロ13号のキーホルダーや、
想い出の私物、そして懐中電灯を、しみじみとした表情で持ち帰っていた。
──どうですか、皆さん。
たかが懐中電灯一本にまで込められた、製作側の心理描写の細やかさ、巧みさ!
こういう「ニヤリ」とする細部の積み重ねが、
Xファイルを特別な作品にしているのだと、筆者は思う。
冗談抜きに言うと、
いまだにストリームライト社などでキセノンモデルが販売され続けているのは、
キセノン光源を必要とするプロフェッショナルがいるからだ。
LEDライトは、霧や雨の中では光が乱反射して「光の壁」を作ってしまうが、
キセノンは透過率が高く、遠方まで照らしやすい。
そのため、悪天候時や火災現場の煙の中で活動する消防士たちには、
今なお必須のツールとなっている。
──ひえっ。
というわけで、小説版シーズン10では、
モルダーとスカリーが使っている懐中電灯も、実はテレビ版とは違っている。
映像作品では、
爆光LEDライトのほうが断然映える。
しかし、読ませる小説では、携行品一つにさえ重みを持たせることができる。
だからこそ、
モルダーが20年前から使い続けている、思い出が詰まったキセノンライト──。
それが、彼のポケットに、今も青白い光を灯しているのだろう(実際に肉眼で見るとオレンジなのだが)。
たしかに、フェニックスTK22みたいな大型タクティカルライトをスーツのポケットに入れるのは無理がある。
明るさでは劣るが、スマートなスコーピオンのような細身のライトを選ぶほうが、現実的だ。
──かつて、捜査でいつも手にしていた懐中電灯。
復職したモルダーは、また「サイドキック」として活躍させてやりたかったに違いない。
ライトマニア諸君、モルダーを見習おう。
(いや、まずはオマエだろ。次々にライト買って飽きてオークションで売るなよ)
ちなみに、ドラマ版モルダーが使っているLEDライトは、
中国系の有名メーカー製。
だからまあ、そういうわけで──
Xファイルとは、こういう世界だ。
・趣味の悪いネクタイ
・ポケットに忍ばせたキセノンフラッシュライト
・ノキア製のCellularphone
・捜査官バッジ
・腰にはシグ・ザウアー(P228)
・足首にはワルサーPPK/S
・移動はレンタカーのフォードセダン(支局の覆面は使わない)
・モーテル宿泊は当然男女別室(FBI内規厳守)
・土曜日も登庁するモルダー
・豆腐アイス+蜂の粉で健康管理するスカリー
・モリスから譲り受けたウォーターベッドでアパート水浸しにするモルダー
──これ。
このスコーピオンというライトは、実はseason6からseason9にかけて、長期にわたりモルダー、スカリー、ドゲット、レイエスら主要キャラクターに共通して使用された“Xファイルの標準装備”と言っても過言ではないアイテムである。
さらに、2008年公開の映画『X-ファイル:真実を求めて(I Want to Believe)』でも、スキナーが使用していたライトはおそらくこのStreamlight Scorpionであり、まさにFBIドラマにおける名脇役として、静かにそして粛々とその存在感を示し続けた。


1997年から2001年にかけて放映されたXファイルのseason6〜9において、ストリームライト社製スコーピオン(Streamlight Scorpion)は、モルダー、スカリー、ドゲット、レイエスらが一貫して使用する“標準装備のフラッシュライト”として、ほぼ全エピソードに登場し続けた。
この時代背景を考えると、SureFire(特に6PやZ2など)は既に軍・法執行機関・プロフェッショナルユースを前提とした高性能ライトとしての地位を確立しつつあり、同時にサバイバル/ミリタリー系マニア層の間でもカリスマ的な人気を誇っていた。
にもかかわらず、Xファイルの制作陣は5年にもわたってストリームライトの同一機種を使用し続けたわけで、その選定には明確な意図があったと考えざるを得ない。
ひとつ考えられるのは、Streamlight社によるスポンサードの可能性。実際、過去のドラマ作品──たとえば『冒険野郎マクガイバー』では、スイスアーミーナイフで知られるビクトリノックス社がスポンサードしていたという有名な例もあり、製品の露出とブランドイメージの定着に大きく寄与していた。
あるいは、Xファイルというシリーズの持つ「リアル志向」と「夜間活動の多い捜査スタイル」──そしてあの独特の低照度の映像美にマッチするライトとして、スコーピオンのコンパクトさ、押しやすいテールスイッチ、程よいスポット光といった特性が制作スタッフに高く評価されていた可能性も。
ジリアン・アンダーソンが語った「懐中電灯エピソード」
2008年のあるトークショーにて、スカリー役のジリアン・アンダーソンは、次のようなエピソードを笑い交じりに語っています。
G:私はナンバー1だった?ナンバー2だった?私たちの携帯がどんなに大きかったか
覚えてる?たまたまそれをポケットに入れてたというわけ。(もうみんな笑い転げてる。)
D:そうさ。きみはそれをポケットにいれるために、トレンチコートとか着てないといけなかった。
G:片方に携帯、もう片方には Xenon のフラッシュライト。翻訳と典拠元 My Library様 http://blog.goo.ne.jp/danayymulder/e/e56e5248b1384a717a137765ab8768c4
ジリアンが言った「Xenon flashlight」って表現、あれは単に「懐中電灯」と言わなかったところにセンスが出てる。
LED全盛の今となっては、あえて“キセノン”と名指しすることで、当時のローテクさと、それでもギリギリでプロっぽさを保ってた撮影現場の空気が浮き彫りになる。
おそらく彼女の発言は、撮影現場で毎日のようにあの機材と向き合っていた当事者としての記憶に基づいてるんだろう。
それこそ本番直前に「ライト点かない!?」ってなって、監督が「バルブ替えろバルブ!」って叫ぶ横で、ジリアンがイラつきながら新品のキセノンバルブ握りしめてる姿が想像できる。モルダー役のドゥカブニーは隣で「ほら、またスカリーのエイリアンライト壊れたよ」とか軽口叩いてるけど、ジリアン本人はもう“あーっもうこのクソが!!”って感じで現場に殺気が立つ──そんなシーンがあっても不思議じゃない。
しかも、キセノンバルブって本当に繊細。点灯直後の高熱と電流に耐える設計のくせに、ちょっとした衝撃であっさり昇天する。スカリーが薄暗い倉庫で走りながら捜査してる最中に電灯がプスッと消えて、監督が「……カット」って呟く虚無感、想像に難くない。
それをあえて“キセノンのフラッシュライト”って表現したジリアンは、たぶんそこまで見えてる。
現場での「生き物としてのライト」に、軽く敬意を払ってる。だからこそ、「ただのライトじゃないよ」と言いたかったんだと思う。
そして、当時の主流──Surefire 6Pなんかはまさにその“キセノンライト界の女王”だった。優れた光量、タクティカルな外装、手の中で“戦うための道具”として成立する重量感。代償として、CR123A×2本という高価な電源と、500時間保証という名の消耗品バルブ。
軍用と割り切れば当然のスペックなんだが、ドラマの撮影現場でそれを回すには、とにかく“予備”が大量に必要だったはず。
そして、その予算を連邦政府がどう組んでたのか──お察しの通り、モルダーは結局、経費使いすぎで叱られてる。だが、こちとら未確認飛行物体を追ってるんだ。
電池代ごときで捜査止められてたまるか。……とはいえ、局の監査は甘くなかった。「局のカード使って泡風呂入った件」とセットで問題視(!?)されるのがまたリアル。
まとめると、ジリアンのあの“Xenon”発言ひとつで、機材・撮影現場・演出・予算・そしてキャラクターの人間味まで一気に浮かび上がる。Xファイルという作品が、単なるSFじゃなく、どれだけリアルの“現場”に根ざして作られてたか、よくわかる一言だった。
『Xファイル』2016年版で登場したライトの機種が判明
ここまで来た以上、第10シーズン『X-ファイル 2016』において、モルダーとスカリーがどんなライトを使っていたのか──当然ながらスルーするわけにはいかない。
我々サブカル民としては全力でモルスカのライトをチェックしておきたいところだ。
とはいえ、その前に2008年に公開された映画版『X-ファイル 真実を求めて』についても、軽く触れたい。ファンなら避けて通れない作品である。
ちなみにここから先、若干のネタバレを含む。未見の諸君は覚悟して読み進めてほしい。
モルダーの運命はシーズン8で、とんでもないローラーコースターを見せた。行方不明→発見→死亡→復活→職場復帰という超展開。
あの頃の視聴者は情緒がジェットコースターだった。
その過程で、モルダーを捜索していたドゲット捜査官と晴れて同僚に。男同士の熱い共鳴──というより微妙な距離感のまま、やがて18話『到来』で、かつての油田事件(ブラックオイル騒動)の責任を問われ、モルダーは正式に捜査局を辞職することになる。さらば、バッジ。
モルダーにかけられた殺人容疑とは?
以後、Xファイル課はドゲット、レイエス、そしてスカリーのトリオ体制へ。
まさに「今までのことは水に流す」精神である。
モルダーにかけられた殺人容疑は一旦棚上げしつつ。
ところがどっこい、シーズン9の冒頭(2001年11月~2002年5月放映)でまたしてもモルダーが行方不明。今度はヴァージニア州某所の政府秘密施設に侵入し、そこで軍人を「殺害した」という容疑で追われることに。
だがしかし、その兵士、実は「スーパーソルジャー」と呼ばれる無敵の存在であり、死んでなかったので殺害は成立していない。モルダーは無罪なのである。
モルダーはヴァージニア州のとある政府の地下秘密施設に侵入した際、そこで軍人1名を殺害した罪に問われている(※事実は、倒したのはスーパーソルジャーという無敵の兵士だったため、彼は復活しており、殺害は成立していない)。
典拠元 フォクスジャパン公式サイト https://video.foxjapan.com/x-files/theatrical2/qanda.html
──なのに!
影の政府主導のインチキ軍事法廷によって、モルダーはまさかの死刑宣告というどこのディストピアだ状態に。
ここでスカリー、ドゲット、スキナー、そしてまさかのカーシュ副長官(!)まで加わり、チーム・モルダー救出作戦が始動。
結果、モルダーは基地の独房を脱出し、見事逃亡に成功する。映画顔負けのスリル展開である。
そして時は流れ、2008年公開の映画『X-ファイル 真実を求めて』へ。
かつての相棒スカリーに、FBIからモルダーのプロファイリングを求めて協力要請がかかる。ここで初めて明かされる、モルダーがスカリーと同棲していた衝撃の事実。
逃亡生活、実に6年間──モルダー、引きこもりスキルを極めすぎである。
当然、モルダーは公式には脱獄犯・手配犯扱い。しかし、アメリカ合衆国連邦捜査局が本気出せば、モルダー一人捕まえるなんて朝飯前。
それでも逮捕されず放置されていたということは──
「当局に何か思惑があるはずよ」
スカリーの冷静な分析が光る。
たしかに、スカリーのスーパーでの買い物パターンを張り込めば、即バレるレベルである。
(余談だが、あのビデオ依存症については、クリス・カーター曰く「完全回復済み」とのことだ。よかったな、モルダー)
最終的に、FBIへの協力を条件に、モルダーへの追訴は取り下げられ、めでたく恩赦。
これはもう立派な司法取引と言っていいだろう。
──と、ここまで一気に振り返ったところで、いよいよ『2016版』へと話を進めようではないか。
X-ファイル2016の内容

シーズン10、ついにモルダーとスカリー捜査官は最新型──強力なLEDフラッシュライトを手にすることになる。
暗闇に弱かったあの懐中電灯時代に比べ、これぞ時代の進歩というやつである。
──と思いきや、小説版ではLED使用を否定する描写もあり、ちょっとした矛盾が生じている。
さて、話を戻そう。映画『真実を求めて』で当局への捜査協力を経て手配が取り下げられたモルダーだったが、その後、スカリーは彼の暮らしぶりについて詳しく把握していなかった。なぜなら、2016年版で二人が再び共に動き出すまで、彼らは別居していたからである。
その断片的な情報は、2016版の小説『X-ファイル 2016 VOL.1』から伺い知ることができる。
スカリーが知っているのは──
・モルダーはいまだに、かつて二人で暮らした小さな家に一人で住み続けていること。
・13年間、まともに定職についていないこと。
・ジーパンがだぶついていること。
──以上。
要するに、社会復帰とは程遠い引きこもり生活を送っていたらしい。
しかも、もう手配もされていないのだから、隠れる理由もない。
なのに、モルダーは外の世界から自ら距離を置き、つつましく暮らしていた。
かつてモルダーは、FBIから”強制休暇取得命令”(「10日休まないと八週間分の給料カットな!」)を言い渡され、渋々休暇を取った過去もあった。
「僕も生活のためにはお金が必要だからね」というあのセリフ──今となっては懐かしい。
だが現実問題、モルダーの生活費は一体どうしていたのか?
偽名で論文を発表して一山当てたのか?
『実録・X-ファイル 元FBI特別捜査官モルダー氏のマル秘告白』とか?
──そんな憶測をまさに、2016版で登場するタッド・オマリー(動画ニュースサイト運営者/保守派陰謀論者)がモルダー本人にぶつける。
「本でも書けばよかったじゃないか」と。
しかしモルダー曰く──
「それは焚書になった」
──と笑い飛ばすのである。
冗談抜きで、スカリーもモルダーに「本を書きなさい」と勧めたことがあった。
学問的アプローチと称して、たぶんお金のことも気にして。
だが、モルダーは信条からそれを拒否した。
X-ファイルは、金のためのネタじゃない──それが彼の矜持だったのだろう。
13年ぶりに再会したモルダーを見て、スカリーはこう評した。
「職にあぶれて昼日なかから街をうろつく連中と大差ないわ」
……だが、そこにモルダーなりの”自由”があったのだ。
その失われた13年間──モルダーが何を考え、どんなふうに生きてきたのか。
それを描く物語、見てみたいものである。
「モルダー13年引きこもり生活編」、あるいは「引きこもり探偵モルダー」──本気で見たくないか?
ていうか、13年間引きこもって、捜査官として突然現場復帰していいのかよ……。
まあ、X-ファイルならアリだろう。
それではまず、軽く今回のseason10について所感を述べたい。
25年前、多くの怪物や宇宙人、そしてそれらを隠ぺいしようとする政府の陰の権力者たちと戦う中で、拉致されたり墓場送りになったり、過酷な経験を重ねてきたモルダーが、肉付きよく帰ってきた。
モルダーはシーズン8で油田のブラックオイル事件の責任を取る形で、自らFBIを依願退職して去った。その後は、妊娠中のスカリーを見舞いに行ったり、興味本位で後任のドゲット捜査官の捜査に首を突っ込んだりして(結果的にモルダーが介入したおかげでドゲットは命を救われた)、失業状態をそれなりに楽しんでいたようだ。
しかしその後、モルダーは行方不明となり、ひきこもり生活に入る。おそらく運動不足のせいだろう、太ってしまい、以前のように走ったり飛び跳ねたりすることが難しくなった。貫禄が出たと言えば聞こえはいいが、どう見ても避けられない中年太りだった。「お前もか」という感想を抱かずにはいられない。
モルダーはすでに中年というより壮年に入り、捜査官としての定年退職も目前に迫っている(もっとも、何歳で定年なのかは知らないが)。一方、スカリーは美魔女化し、9センチハイヒールを履いて捜査に乗り出していた。
また、モルダーたちが捜査に使用する車も、かつてのセダンからSUVへと変わった。これも時代の流れか。かつて局の監査官から「レンタカー代が高すぎる」と叱責されていたモルダーだが、今回も支局の捜査車両は使わず、またしてもラリアットレンタカーを利用しているようだ。後の経費監査でしこたま責められる伏線になりそうである(笑)。
さらに、モルダーのスーツも時代に合わせて細身に変わった。生地も薄くなり、かつての無骨な雰囲気は影を潜めた。
この新シリーズは、小杉版の吹き替えと、元祖モルダーとスカリーを演じた戸田恵子・風間杜夫版の二種類がそれぞれ配信されているのも興味深い。筆者は20年前にテレビ朝日で風間版モルダーを見ていた世代なので、やはり風間版モルダーに愛着がある。
風間杜夫は2016年、新シリーズのアフレコに向けた記者会見で、「モルダー老けたな……と思いました。おれも老けたけど」と語ったそうだ。すると隣にいたスカリー役の戸田恵子から、「風間さんは(当時と)変わらないのがむしろ超常現象」とバッサリ斬られた。ヒェーッ。
今シーズンは全6話と回数は少ないが、見どころは、スマホにはしゃぐモルダー、赤いビキニ姿にドン引きするモルダー、そしてスカリーの色っぽいシーン。いや、そうじゃなくて、LEDライトだ。
X-ファイル2016でモルダーとスカリーが使っていたライトは?

2016年に発表された待望のXファイルseason10に続き、2018年7月には日本でもseason11がリリースされた。二人が挑む怪事件、そして二人の使うライトに迫る! 画像の典拠元 『Xファイル』 (C) Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
さて、そういうわけで、ファンが待望していた米テレビドラマ「X-ファイル 2016」に出てくるライトは、初期に使ってきたマグライトよりは全体的には大きくないが、スコーピオンやシュアファイヤ6Pより1.5倍ほど大きなヘッドを持つハンドライトに。
光の具合いを見て分かる通り、LEDライト。一体どこのメーカーの製品なのだろうか。
これまで通り、アメリカ製の懐中電灯をモルダーとスカリーは捜査に投入するのだろうか。以下に研究及び批評目的のため、画像を引用しながら細部などを検証していこう。
season10で二人がライトを使うのは、エピソード2 「変異/Founder’s Mutation」からなのだが、細部がはっきり映らなかったので不明だった。そして第三話『トカゲ男の憂鬱』から、ようやくXファイルらしさが出てきたので詳しくレビューしてみよう。
オレゴン州シャワン。ちょうど満月が夜空を照らし、ロマンティックというよりは狼男でも出そうな少し不気味な夜。森の中で男女が紙袋に入れた有機溶剤でラリっていたところ、樹木の隙間から見知らぬ男が怪物に襲われているところを目撃した。怪物はまるで爬虫類、いやトカゲそのものだった。
いわゆる『中年の危機』を迎え、自分の人生に迷いが生じながらも現地で捜査に乗り出すモルダー。そしてスカリー。スカリーが死体発見時にスクリーンに出てくる以下の場面。
モルダーがライトではなく、スマホを片手にしているところが『あっ、このシリーズってそういうやつなんだ』と思わせるが、それはあらぬ誤解だ。
ところで、モルダーのパソコンのフロントカメラにはテープが貼ってあった。2016年の9月にFBI局長のジェームズ・コミーが「ノートPCのカメラをテープで塞げ、知らないのか、誰かに覗かれてるぞ」 と警告を発するニュースを思い出した。
それよりも、スカリーが手にするライトに注目。ヘッドの大きさが目を引く。この場面だけ見ると、ヘッドからアダプター接点らしきものまでの距離を見る限り、筆者は当初、クラルスXT12GTに見えた。ところが大きな画像で検証をした結果は違った。

最も賛否が別れるのは、モルダーが怪物に向けたモノがシグやグロック、それに懐中電灯ではなく、Nexus 5のカメラレンズってところか。
対するスカリーはライト。Xファイルの基本を忠実に押さえる。最先端アイテムにどっぷりはまってるモルダーだが、アプリの操作にはまだなれていないようで、犯人に使い方をレクチャーされる始末。しかも、着信音は本作品のあのテーマ曲というお遊びが心憎い。
だから余計にコメディ色が強い。ただ、ギャグ回は最後で少し切なくさせるのが本シリーズの王道で、今回もおそらくそんな王道的演出。なお、スカリーはさらに大きなNexus 6(モトローラ)である。
Xファイル・ファンを公言する伊集院光もラジオでこの『トカゲ男』だけは他の回に比べて異質でカオスだ……と、語っていたこのepisodeはモルダーが捜査官として連邦捜査局に復職し、初めてXファイルの王道とも言える怪人事件の捜査に乗り出す記念すべき回でもある。
やっぱりXファイルは宇宙人もいいが、怪人モノもいい。
とは言うものの、中年の危機(おじさんの思春期と言うらしい)を迎えた彼は、僕も中年だしいつまでも化け物を追っていていいものなのか……とかなんとかスカリーに胸の内を吐露するのである。どうやらモルダーは超常現象や怪人事件の捜査に乗り気ではない様子。
ローカルな怪人事件を追うよりも、もっと大掛かりな政府の陰謀を捜査したいのだろうか。モルダーが職を辞してから10数年で『デスバレーの動く石』のナゾも科学的に解明され、モルダーが密かにその石と関係があると思って独自に内偵捜査を行っていた岩石モンスターの正体が地元造園会社のゆるキャラ『岩男ちゃん』であったこともネットで判明。
『これからの捜査活動はネットで充分だ(お前らの使うシュアファイヤの電池代とかモーテルの宿泊代やラリアット・レンタカー社に支払う経費が糞高いんだよ馬鹿、みたいなネチっこい叱責)』とは、かつての経費監査でモルダーが監査官に言われたセリフだが、インターネットの発達により、神秘的な宇宙人といったミステリーがもはや笑いのネタにしかされない時代、ここへ来て超常現象解明への情熱を一気に失ったモルダーの気持ちもわからなくはない。
しかし、モルダーは中年というより、55歳。もう定年退職が近い歳だな。なお、モルダーの愚痴に耳を貸さず、薬をちゃんと飲んでるのか?と気遣うスカリーは50歳。年齢書くのやめろよ。
話を戻す。捜査にやってきたモルダーとスカリーが、トカゲ男と遭遇する一連の場面における二人の公衆トイレ突入シーン。スカリーがトイレ前でグロック19と共に構えているライトに注目。

当初、筆者はチューリップ状に上方へ向かってわずかに広がるヘッドと表現し、その後端には二本線が見えると書いた。さらにグリップのサイドに見えるスイッチ・ボタンに見える円形部にも言及した。
それらの理由からクラルスのXT12GTと断定してしまう。XT12GTではこのボタンに見える部分、ボタンではなく、充電用アダプターをカチッとマグネットで接合させる部分とバッテリーインジケーターを兼ねている。
ところが、大きい画像で検証した結果、上方へ向かってわずかに広がるヘッドでもなく、円形のボタン状でもなく、ただの光のいたずらと判明。そして、これらの形状を持つタクティカル・ライトをさらに調べてみたところ、FENIX TK22に酷似。
ヘッドの後端には二本線、くびれの位置と形状、グリップ前方のつるんとしたフラットなデザインがほぼ一致。なお、『トカゲ男の憂鬱』での公衆トイレ前のスカリーはサイドスイッチ部分を反対側に向けているのでサイドボタンは映っていない。
そして『Home Again(バンドエイド・ノーズ・マン)』でのシーン。劇中、明るすぎて手元のライト本体が良くわからないので確認が難しいのだが、本エピソードではモルダーとスカリーの両名が使うので、アップシーンもあり細部がわかる。とくにスカリーが自分の顔の前へライトを持ってくるシーンでは、モルダーの持つライトがアップになる。クラウンベゼルや、ヘッドに転がり防止のための特徴的なカットが入っていることがわかる。
その後、『X-files FENIX TK22』で検索すると以下のサイトを発見。というか、すでにFENIX TK22であると外国のサイトで結論づけられていた。
上記サイトから引用した画像を見ると、とくにサイドスイッチ部分が一目瞭然。
というわけで、2016年版でFENIX TK22を使っていることが判明した。
なお、クラルスもフェニックスも中国メーカー。なぜ劇中のFBIがフェニックスのライトを選んだのかは知らない。アメリカ政府は中国製のファーウェイのスマホを公的機関職員が使わないように呼びかけていたが、スマホのシェアも上位は今や中国メーカーだしライトも所詮、家電だしな。
ただし、フェニックス自体は一流と言ってもいいほどのライトメーカーで、中国発の新興メーカーがここまでアメリカおよび世界の警察や軍の特殊部隊にまで短期間で浸透しているのはかなり異例だという。実際ライトマニアからもPD35などは評価が高いんだよなあ……。うるさいお兄さん方を唸らせるんだから、商売がうまいというよりは、やはり性能がいいのだろう。
でもそこはやっぱり、モルダーもスカリーも連邦政府職員なんだからあ、アメリカ製のSUREFIREか、マグライト(ミニマグLEDとか充電式のマグタックとか)を使用希望ですわ。しかし、予算的には安い中国製のほうがいいかもしれませんな。
ところで、FENIX TK22のサイズは全長が15センチ弱でグリップ径が2センチ強。一番大きなヘッド部分の径が4センチ。重量は157g(電池別)。それまで彼らが携行装備として使っていたストリームライトのスコーピオンや…

シュアファイヤ6Pクラッシックのヘッドは1インチ(2.54センチ)という絶妙なサイズだったので携行も便利だったはず。

しかし、今回はやや、かさばりそうだ。モルダーはともかく、スカリーはスーツのどこにこれを隠すのか?相変わらずハンドバッグは持たないしね。
スカリーは初期のころこそ、ぎこちない演技と笑顔とあいまって、大きなショルダーバッグを肩から下げるなど可愛いらしかったが、捜査活動時は次第に手ぶらになっていくとともに笑顔が消え、モルダーとともにサングラスをかけるなどヤンキー化、調子に乗り始める。心の闇ってやつだ。おい。
実際は手ぶらどころか、捜査官バッジ、財布、運転免許証ケース、携帯電話、車のキー、ホルスターに収めた15発装弾のグロック19、腕に腕時計、そしてフラッシュライトなど、多くの仕事道具を身に着けて持ち歩かなくてはならない。彼女のEDC(エブリデイ・キャリー)ってやつだ。
モルダーにいたってはピッキングツール(!)に折り畳みナイフ、ヒマワリの種まで持ち歩いている危ない男。
彼らはこれらの所持品を都合よく隠すためのバッグ替わりなのか、秋、冬、春にかけて常にスーツの上にコートを着ていた。真冬の北海道をあんなペタンコパンプスみたいなので歩き回っていた西紋別警察署刑事課の雪平夏見もここまで携行しないだろう。何の話だ。近所のセイコーマートまで100キロか。
で、モルダーも今流行の細身スーツになってしまったようだが、ポケットにこんな大きな懐中電灯を入れるなんてスーツのポケットには優しくないだろうな。もちろんスカリーも。ほんと、どこに隠すのだろう(とはいえ、モルダーはウオッカのビンをスーツの内ポケットに入れていたような)。ある意味、マグライト時代に回帰と言えるかもしれないが、ドラえもんのポケット的な演出を本気にするのは時間の無駄なのでやめておけ。
余談だが、日本国内ではトゲトゲベゼル(クラウンベゼルとかストライクベゼルという)つきのライトも微妙だ。ストベゼについての個人的な見解は以下に記している。

これデザインだもん!人を傷つけるためのモノじゃないもん!と巡査に説明できる自信がないから、おそらく筆者はFENIX TK22を買っても車に積まないなあ。
ともかく、season10では二人ともおそろいのFenix TK22を使用し、捜査を行ったようである。
なによりLEDライトの利点はバルブ交換不要、充電池を使えば電池代がほぼゼロという点だろう。これでもう、レンタカーの利用料が高い、モーテル代が高い、ライトの電池代とバルブ代がかさむ、出張捜査のたびに現地の雑貨屋でマグライト買ってんじゃねーぞ小僧……などなど、モルダーとスカリーが今後、捜査経費の監査でさまざまな因縁を付けられて責めを負うこともないかもしれない。さすがに出張のたびに現地でマグライト買ってはいないだろ……。てことは、出張カバンに毎回あのでかいマグライト入れてたのか。ナイフ、マグライト、ひまわりの種、ノートパソコンを出張かばんに詰め込んで。
なお、小説版では非常に興味深い場面が描かれているので以下に紹介する。

season10は全6話というミニシリーズであり、Fenix TK22の活躍もほんの少しであったが、2017年には2018年公開とされるseason11制作の発表もあった。
Xファイル2018(season11)でモルダーとスカリーが使っていたライトは?
2018年7月から、Xファイル2018の日本国内正式配信が正式に開始。新シーズン11版の内容およびライトのご紹介を行っている。ライトの話はまだまだ続く。
Xファイル2016版が思いのほか視聴者から好評だったことから、制作陣は『Xファイル2018』の制作を決定したわけ。
今度はどんなライトを使うのだろうとワクワク。お前の頭はハッピーライトかよ。
どうも、番組のスチル写真を見る限りでは、前回に引き続いてFenix TK22のよう。
2018年3月8日、ようやく日本語版の番宣が解禁され、7月4日より先行でデジタル配信。
7月18日よりブルーレイ&DVD発売。
したがって、詳しく作品解説をはさみながらXファイル2016版のライトに迫りたい。
⚠️ネタバレ注意⚠️

スカリーのライト、Fenix PD35にも見える様な……?画像の出典 THE X-FILES 2018(Season11)『Rm9sbG93ZXJz』より(C)Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
『THE X-FILES 2018(シーズン11)』のエピソード「Rm9sbG93ZXJz」
AIの反抗とForowa Sushi(フォロワー・スシ)
『THE X-FILES 2018(シーズン11)』のエピソード「Rm9sbG93ZXJz」。タイトルは暗号めいていますが、内容は実にコミカルでありながら、やはりどこか怖さを感じさせる一編。
物語は、モルダーとスカリーが無人の全自動寿司店に食事に行くという導入から始まり、次第に人工知能による“反乱”に巻き込まれていく。
シリーズファンなら、かつての名作「機械の中のゴースト」を思い出す。あれから25年。今では“スマートホーム”という言葉も当たり前になったが、当時のXファイルはそうした未来を先取りしていたのだと、改めて驚かされる。
今回の「フォロワー」は、そのコンセプトを現代のSNS文化と融合させ、見事にリミックスした仕上がりに。
モルダーとスカリーは、たとえ寿司を食べに行くときでもライトを持参するのか。そのあたりも、ファンとしては気になるところ。ちなみにモルダーが乗っている車も、なかなかの高級モデル。
アメリカでは、多くの警察官が早期退職して安定した民間職に転職するのが一般的だと言われているが、FBIの場合は高収入が見込めるため、そうした心配はないのか。
だからこそ、モルダーも呑気にスマート寿司屋で深海魚なんかを食べているのかもしれない。
Xファイルの魅力は、捜査シーンだけでなく、こうしたプライベートな場面でも独特のシュールな味わいを見せてくれること。それは昔も今も変わらない、本作の核となる部分だと言える。
今回は、すでに二人が店に入ったところから話が始まる。会話はない。沈黙のまま、モルダーとスカリーはタッチパネルをポチポチ叩き、『ニギリ』だの『アジ』だの、適当に寿司を注文した。
ところが直後、スカリーのスマホにいきなり寿司屋から友達申請が届く。なにこの積極性。もちろんスカリーは秒速で拒否。一方モルダーは、そんなことなど知ったこっちゃなく、スマホでゲームに夢中だった。さすがである。
しばらくすると、カウンターの小さな扉がウイーンと開き、合成音声で「オイシイ」とかなんとか言いながら寿司が出てきた。スカリーの頼んだ寿司は、笹の葉で綺麗に飾られ、まるでカタログの見本みたいに整っていた。
スカリーは広島県に住んでいたこともあるだけあって、箸使いも板についている。寿司をつまみ、涼しい顔で口へ運ぶ。完璧だ。
だが、モルダーには悲劇が訪れた。彼の注文した「Special」とやらは無視され、代わりに出てきたのはナマのニュウドウカジカ。ピンク色の不気味な魚が皿にベローンと鎮座。
スカリーはその光景に爆笑。スマホでパシャパシャ記念撮影。モルダーは、皿の上で今にもしゃべり出しそうな”寿司”を見て、眉間にシワを寄せていた。
ちなみに、カジカの活造りは日本にも存在するが、ニュウドウカジカそのまま丸出しはさすがにやりすぎだ。これまた日本が誤解される未来が見える。
なお、この『フォロワー寿司店』のロゴマークだが、よく見ると日の丸を細切れにしたデザインである。つまり、制作陣に韓……まあ、察してほしい。
そんなこんなで、モルダーは「違う!」とばかりに珍魚トレーを持って厨房に向かった。しかし、そこにいたのは感情を失った労働者ではない。ロボットだった。そう、ここはスマート寿司屋なのである。冷たい鉄の手がせっせと寿司を握る世界。夢も希望もない。
だが、事件はここからだった。モルダーは会計のとき、チップ支払いを断った。
それが寿司ボットの逆鱗に触れた。
モルダーが精算機に楽天カードを差し込むと、カードが抜けなくなるという珍事発生。まさにカード地獄。そして、二人は店のドアをロックされ、完全に閉じ込められるハメになった。
なにが楽天カードだ。それはお前だろ。
モルダーという男、なにかとクレジットカード絡みのトラブルに巻き込まれるタチである。例えばシーズン3のエピソード13「星 (Syzygy)」。1984年に一度という悪い星回りが、人間と土地にダブルパンチで悪影響を与えるという話だった。
この回では、地元の女性刑事まで星のせいでおかしくなり、モルダーに向かって「なんだか帰りたくなくなっちゃったわ」などと口走り、酔った勢いもあって彼をいきなり押し倒す。
その頃モルダーは、自室のモーテルでウオッカにオレンジピューレをぶち込んで、スクリュードライバーを自作して飲んでいた。これがまた妙に似合っていて笑える。
しかも、モルダーと女性刑事のいちゃつきっぷりにスカリーはご立腹。普段は絶対吸わない煙草をスパーッとふかす始末。星回り、恐るべしである。
さて、本作には「占いの館 ジリンカ」という店が出てくる。営業は9時から5時、支払いはカードOK。さすがアメリカ、占いすらキャッシュレスである。
ここでモルダー、得意げにビザのゴールドカードを出す。やっぱり局のビジネスカードなのだろうか、ゴールドとは渋い。だが、ここで問題発生。
このジリンカおばちゃん、どうも連邦政府職員が嫌いらしく、カードが使えないふりをしてモルダーにカマをかける。
「支払いはカードでもいいって言ったじゃないか!?」
「このカードが有効ならね(ドヤ顔)」
カードを端末に通しても、なにやら認識しない。
モルダーは「そんな!僕はFBIの……(モルダーって言います)」と必死のアピール。
しかし、ジリンカは余裕たっぷり。「最近は連邦政府も赤字続きだって言うじゃな~い」
モルダー、沈黙。可愛い。
ちなみに1993年以降、FBIはクレジットカードの支払いと同時に容疑者データベースを照合するシステムを導入しているという話もある。だからモルダーがあれだけ慌てたのも、無理はない。
それにしても、ジリンカおばちゃんも人が悪い。あんな状況でカードが切れなかったら、そりゃあ誰でも汗かくわな。
話を戻す。
その後、ハイテクすし屋から脱出した二人。スカリーは自動配車・自動運転のスピード狂タクシーで高速帰宅する。一方、モルダーは自分の車で帰路につく。しかし、いずれの車中も内蔵のAIシステムが人間の命令への拒否、すなわち反乱の兆候を見せ始めていた。
とんだすし屋だったな……と憤慨しながら、モルダーはすし屋のカウンターの自動清算機に刺さりっぱなしになっている自分の楽天カードを停止させるため、デスクにスマホで電話をかけるが……。だから楽天じゃねぇ。
一方スカリーは、注文していない偽ルンバを配送してきた楽天ドローンストアの配送用無人ドローン、自宅のスマートホームの反乱などにより、驚愕のトラブルに巻き込まれてしまう。……だから楽天じゃねぇ。楽天好きだなお前…。
すんでのところでスカリー宅(なお、スカリーの家のセキュリティシステムのパスワードは “Queequeg(飼っていた犬の名前)”)に駆けつけたモルダー。
二人は助けを求めるため、911に電話。
反乱AIの仕業か、つながらない。
そしてスマホを捨てて夜の街、夜の無人倉庫へ逃げ込むモルダーとスカリーが突然、懐中電灯を手に持っている。ここがXファイル。
握りしめた僕のペンライトも思わず発熱。
そして、今回のシーズンでも彼らが使っているのは…

モルダーとスカリーが手に持つライトはフェニックスTK22。THE X-FILES: L-R: Gillian Anderson and David Duchovny in the “Rm9sbG93ZXJz” episode of THE X-FILES airing Wednesday, Feb. 28 (8:00-9:00 PM ET/PT) on FOX. ©2018 Fox Broadcasting Co. Cr: Shane Harvey/FOX
二人の持つ懐中電灯はまたもや、season10で使っていたフェニックスTK22。
モルダーがスカリーの家に彼女を助けにいった直後から持っていたので車の中にあったのか。
それにしても、モルダーとスカリーの服装もだいぶ変わった。
昔は公休日ともなれば、モルダーはレザーのコートをびしっと粋に着こなしていたものだ。なのに、今ではすっかりカジュアル仕様。なんだそのユニクロみたいなパーカーは。
やっぱり皮や毛皮を着ていると、今の時代のアメリカでは叩かれるからなのか。時代である。
とはいえ、クリス・カーターの言う通り、モルダーとスカリーは今でもポケットに懐中電灯を忍ばせる習慣を忘れていない。
たとえそれがプライベートのスマート寿司屋巡りであろうとも、である。
iPhoneのCMみたいな言い回しはやめろ。腹立たしい。
そしてもう一つ。
ベッドの下から、スカリー愛用のピンク色の「何か」が出てくるというご愛敬シーンも用意されていた。
いいのか、それで。
なにせこのシーズンでジリアン・アンダーソンは降板するというのだから、もう製作陣もやりたい放題である。
第10話「闘争 Part.4」
逃走する息子ウイリアムを追うモルダーとスカリー。モルダーが自分の息子と信じ続けていたウイリアムの衝撃の事実が発覚するのがこの最終話。
今回はもっともライトが活躍するエピソードといっても過言ではないだろう。おまけにモルダーが思わず地面に落としたフェニックスTK22が大写しになるのだ。
追記 TK22にしてはヘッドの形状が違うような気が。

(C)Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
それにしても、モルダーが使うサムスン製スマホといい、二人が使うフェニックス製ライトといい、なんとなく過去シーズンに比べ、商品宣伝くささが際立っているという印象だ。紹介している俺も俺だけど。
というわけで、前シーズンに引き続いて二人の持つ懐中電灯はまたもや、フェニックスTK22だったのである(「闘争 Part.4」は微妙)。
なお、2018の続編の制作は決定していない。というのもシーズン11(2018)の視聴率は決して良いとは言えないためだ。さらに、スカリー役のジリアンが今シーズンでの降板をすでに決定しているため、今後はモルダーのみの登場となるとみられている。
スカリー無きXファイルとは寂しい限りであるが、 クリスカーター自身は続編制作に意欲を示しており、FOXの予算次第でXファイル自体はまだまだ続く予定だ。スカリーもいつか帰ってくることを願わずにはいられない。

モルダーとスカリーの懐中電灯まとめ
というわけで、モルダーとスカリーがこれまでに使ってきた主な懐中電灯は以下の5つ。
- MAGLITE(主にシーズン1から4まで)
- MAXA BEAM(主にシーズン1から4まで)
- Underwater Kinetics(主にシーズン2から4まで)
- STREAMLIGHT(主にシーズン6から9まで)
- SUREFIRE(主にシーズン6。かなり限定的に使用)
X-ファイルって超常現象と陰謀の話なんだけど、ライトに限らず、こういう装備品ディティールへのこだわりがあるから、強みなんだよな。リアルな世界との接地面がちゃんとある。そこが今も“考察しがいのある”ドラマであり続ける理由だと思う。
あと、スコーピオンと6Pの対照表はこうだ。
| 項目 | ストリームライト・スコーピオン | シュアファイア 6P |
|---|---|---|
| メーカー | Streamlight | SureFire |
| 登場作品 | 『X-ファイル』シーズン6~9 モルダー、スカリー、ドゲット、レイエス、スキナーらが使用 | モルダー、スカリーが使用するも、全話通して数回 |
| バルブ種別 | 高出力キセノンバルブ | 高出力キセノンバルブ(P60系) |
| 光束(ルーメン) | 約78ルーメン | 60ルーメン |
| 使用電池 | CR123A × 2本 | CR123A × 2本 |
| 重量 | 約128g(電池込) | 約140g(電池込) |
| 点灯スイッチ | テールスイッチ(モーメンタリ+クリック) | テールスイッチ(モーメンタリ+ツイスト方式) |
| ボディ材質 | アルミ+ラバーグリップ | アルミボディ(HA仕上げ) |
| グリップ感 | ラバーで滑りにくい、軽快な操作感 | 滑り止めの刻み |
| 劇中描写の印象 | ・両手が塞がった際に口に加えて保持 ・片手照射+銃との併用に適していた ・照射→スイッチOFFの手際が良い ・ラバー部が手袋でも滑らず、冬の撮影向き | ・映画や他作品でSWATや軍装備とセットで登場する傾向 ・Xファイルでは逆に「ほぼ使われてない」ことが、意図的に“FBIのスタイル”を演出していた疑いも ・何らかの演出意図で候補から外れたか? |
| 耐久性 | 非常に高い(警察向けに設計) | 非常に高い(軍・警察向けに設計) |
| 総評 | 劇中向き:光の柔らかさと操作性の良さで、“FBIらしい”落ち着いた照射演出が可能 | 戦闘向き:タクティカル用途で威圧感あり。ドラマのトーンによっては強すぎたかも? |
この比較から見えてくるのは、スコーピオンの選定にはかなり演出的な意図があった可能性が高いってこと。Surefireの6Pはタクティカルで格好いいが、X-ファイルの持つ“静けさの中の緊張感”という世界観にはちょっとハードすぎたのかもしれない。
あと、Streamlightが番組にスポンサーしたかどうかは公にはされてないけど、5年以上同じ機種を全員で使い続けるってのは尋常じゃない。それが視聴者に“Xファイルのライト”という刷り込みを与える要因にもなった。
もちろん、彼らFBI捜査官は経費でCR-123A電池をまかなっているだろう。とはいえ、シリーズ後半ではその“経費の使いすぎ”が問題になる一幕もあるので、使い方にはご注意を。
劇中に登場した小物を手に、モルダー捜査官やスカリー捜査官になりきって彼らの当時の時代背景を愉しんでみたいと思うファンはこれらのライトで仲間同士とライトの光を交差させて『X』の文字を作って遊んだり、実用に使ったり、コレクションしてみてはいかがだろう。




















