『Xファイル』でモルダーとスカリーが使ってきた懐中電灯を作品レビューを挟みながら考察!

『Xファイル』でモルダーとスカリーが使う青白い光を放つ懐中電灯はどこのメーカー製品?徹底的に調べて研究してみた!

この作品の概要解説、いまさら必要だろうか?(Xファイルの主な概要は以下で(比較的真面目に)詳しく解説しています)

『X-ファイル(The X-Files)』は1993年から2002年まで米国のテレビ局FOXで放映された、超常現象に挑む男女二人の連邦捜査局(FBI)特別捜査官の活躍と苦悩、そして政府の陰謀を描いたミステリアスなドラマだ。

さて、Xファイルにおいて、モルダーとスカリーは暗い家屋内や夜間での捜査、捜索に必要であることから、懐中電灯を持って凶悪な人間の被疑者、あるいは人間ではない宇宙人、怪物、怪獣、化け物といったたぐいの数々のUMAをこれまで追いかけてきた。

そして、1997年ごろ、視聴者であった僕らもまた、部屋を暗くしてテレビの前でひまわりの種と懐中電灯を握り締めて主人公のモルダーとスカリーに想いを馳せていれば、他に何もいらなかった。いらないなにも。捨てて候。日本放映時のXファイルの主題歌、B’z の歌う『LOVE PHANTOM』。あの断捨離ソングは今も頭から離れない。

というわけで、今回は『Xファイル』の主役であるモルダーとスカリーの携行するプロップ(小道具)の一つであり、ドラマのアクセントに欠かせないアイテムであるフラッシュライト(懐中電灯)に注目するのが、この記事の要旨。

なにしろ、懐中電灯はひまわりの種同様、日本国内で合法的に持てるアイテム(最近ではそうも言えないが)であり、万が一の災害でも防災アイテムとして実用的ではないか。大地震は言うに及ばず、真冬の豪雪で送電線断線、広範囲な大停電が起きる場合も。

僕は万が一の災害に備えて、ひまわりの種とSUREFIREとハローキティ防災ずきんで完全武装してる。きゅっ。ママーッ!(驚愕)

さて、1993年に米国で放映が始まった『Xファイル』では、シーズンが進むにつれ、モルダーとスカリーが持つライトは小型化と同時に高性能(光量アップ)化。

そして、月日は流れ、2016年版で彼らが持っていたフラッシュライトは、これまでのものより一回り大きくなっていた。

なにより、それまでのキセノンバルブのライトからLEDになったことは大きな進化と言えそうだ。

モルダーがFBIを依願退職し、兵士殺害容疑をかけられての逃走、行方不明を経て帰還し、スカリーの家に引きこもって宇宙人SNSを自ら運営し、宇宙人アフィリエイトで生計を立て、スカリーのひも暮らしや、その後に独居生活して都合13年、定職に就かない間に懐中電灯は揺ぎない進化を遂げていたのだ。ライトの光源の主流はとっくにキセノン(ゼノン)バルブからLEDとなり、より明るく、地球に優しい省電力へと高性能化。……なにが宇宙人アフィだ。この大嘘つきが。

では、本作でモルダーとスカリーが使ってきた懐中電灯について、シーズン登場順に説明していきたい。なお、この記事は当初、総字数30,000文字(2018年11月現在14,671文字)にもおよび、あまりにも長大になってしまったのでページを分割した。長大な文章に付き合える方のみ、ページを読み進めていただきたい。14000文字あるぞ。

なお、この記事では批評および研究上必要であることから、日本国の著作権法上で許された引用の条件に則り、Twenty-First Century Fox, Inc.作品『Xファイル』から典拠元を示した上で複数の画像の引用を行っております。

『X-ファイル』の初期に登場した強力ライト『Maxa beam』

シーズン1でとくに出番の多かったのが、とても巨大でごついMaxabeam。懐中(ふところ)に入る電灯どころか、これは誰が見てもサーチライトである。

暗い森や、ウサンくさい研究施設の闇を切り裂いて探るモルダーとスカリーの手にはいつもMaxa beam。画像の典拠元 『Xファイル』 (C) Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

スーツのポケットに携行不可能なこの巨大な手持ちのサーチライト・Maxabeam(マクサビーム)は重さ4キロ。75ワットのキセノンランプを搭載し、2キロ先まで照射可能。映画『ジェラシックパーク』にも登場。なお、モルダー御愛用のグロック19は実弾フルロード状態で850g。日本のお巡りさんも東京オリンピック限定で「グロック45」を一時期使ってたみたい。

2020東京オリンピックで警視庁自ら隊配備の「GLOCK45」が即回収されてしまった理由

25年前のライトだが、出力は現在の機種にも引けを取らないマックス12,000,000 CandlePower。

こんなサイトもある。フラッシュライトを持つスカリーの画像を集めたスプーキーなサイトである。

Scully’s Flashlight

基本的には森林地帯など屋外での捜査活動で重宝された強力なサーチライトだが、謎の海洋生物の恐怖を描いたシーズン6の第13話『アグア・マラ』では、一軒家やアパート屋内の狭い室内でも遠慮なくガンガン点灯グイグイ捜査。

ちなみに『アグア・マラ』ではモルダーとスカリーの持つマクサビームのほか、保安官のマグライト、それに後述する小型ライトを携行するなど、いろいろなライトが登場するのでマニアにはオススメのエピソードですぞ。

『X-ファイル』のシリーズ初期といえばマグライト

Xファイルのseason1はいろんな意味で出来が良く、粒ぞろいのだが、シーズンが進むにつれ、2人の小道具への細かい演出が省かれていくのは少し寂しい。

それはともかく、誰が何といってもXファイルのシリーズの比較的初期といえば、クリプトン球仕様のマグライト(MAG INSTRUMENTS社製)だろう。

モルダーとスカリーが携行するマグライト。3-Cell CかDだ。見てのとおり、長くて重い、携行しにくい、そんなに明るくないともなれば、あまり手にしたくないものだが、モルダーとスカリーはシリーズ1において、とにかくマグライトを愛用していた。繰り返すが、支給品で仕方なく使用せざるを得なかった。画像の出典 『Xファイル』 (C) Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

ちなみにMAG LIGHTではなく、MAG LITEが正しい綴りだ。ピンナップでも単一電池仕様のマグライトを持ってポーズを決めるスクイーズでの二人は有名だろう。

180センチのモルダーでも、とても背広のポケットに携帯できない単一電池仕様のマグライトに魅せられて、放映当時は購入した人も多かったのではないだろうか。

MAGLITE 懐中電灯 Dセル ブラック 6D_(単一電池_6本)

発売当初からウン十年。その形をほぼ変えず、時代のニーズにしっかり追いついて、LED仕様もリリースされているマグライト。

の詳しい歴史と、創業者がなぜマグライトを中国製にしないのかは以下の記事で解説している。サムネがアレで申し訳ない。

MAGLITE(マグライト)の原点とは?35年以上にわたって一貫して米国内で製造される懐中電灯の代名詞

さて『X-ファイル』のシリーズ1だけ見ると、モルダーとスカリーって本当にマグライト愛好家なんだなって思うわけよ。

もちろん、個人の好みではなく、単に支給品として貸し与えられた官給品を使う捜査官であるという設定に過ぎない。

選択肢が限られていた当時の時代を映しているだけなのだ。

実際当時、マグライトは警察や軍隊から圧倒的に採用率が高く、FBIの二人が使っていても違和感はない。

ただ、マグライトもD.CELL 6とか長いモデルは笑っちゃうほど長いうえに、太くて重いのはライト以外の使用方法も考慮しているからである。

その方法についてこの記事で詳しくは書かないし、当時のニュースを見ていた人なら知っていると思うが、ロス市警が装備するマグライトはロドニー・キング事件を引き起こし、ロサンゼルス暴動の原因にもなったほどである。この件を受けてロス市警ではマグライトをパトロール警察官に貸与することをやめて、小型のペリカン製ライトに変更したというエピソードも興味深い。

ある意味、マグライトは時代を映す鏡である。

懐中に携行できないサイズなので、暗がりを探索する場合は直前に車に乗っているシーンが多いように思えるから、FBI本局近郊での捜査の際などは、局の捜査車両に常備か。

さらに初期のころの出張時にはこれを出張カバンに入れて一緒に出張していたのだろうか。

それとも現地の警察やFBI支局から借りるのだろうか?まさか現地の雑貨ショップでその都度、局の経費で買うとか……?

悲しいFBI捜査官たちの経費にかかる攻防戦は以下でウンチク語った。

Xファイル捜査のリアル経費問題!モルダーとスカリーが毎回使う『ラリアットレンタカー』の経費その他が高い

そして、アパートの消毒作業(伏線)のため部屋を追い出されたのを口実に、DCからマサチューセッツ州ミラーズグローブへ車でフラッと出かけて1人で夜空を見上げているロマンチックなモルダーを見られるのが、シーズン3のエピソード12『害虫』だ。

この回で政府が住民に秘密裏に運営しているゴキブリハウスに興味本位で捜査のため潜入するモルダーが構えていたのはマグライトの2-CELL Cだろうか。休日なのに持ってきているこの用意周到な性格。モルダーはマグライトのほか、ピッキングガンまで携行している。これはもう日本なら問答無用で緊急逮捕事案だ

で、モルダーはスカリーと携帯で通話をしながら家屋に不法侵入。いわゆる、僕はFBI特別捜査官だから非番中に興味本位で公的施設に侵入しても違法性は阻却されるものと解されていますってやつだ。これら彼の不法行為の数々が積み上げられ、後に捜査局からの追訴につながってしまうのはご愛嬌だ。解されてねえし何がご愛嬌だ。どこの県警だよ。

そして片手にスカリーと通話中の携帯、片手にマグライトを持って真っ暗な屋内の中に突入したモルダーは、さざめく壁紙の下に蠢く何かを見つけてしまう……。

それにしても、サイズの割に暗いのはさすが95年当時のマグライト。まあ、10センチくらいの至近距離で壁を照らすならさほど暗くもないが、周囲の暗さがまた不気味……。画像の典拠元 『Xファイル』s3 ep12『害虫』 (C) Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

マグライトの光に誘引されたのか、壁の中からワラワラとゴキブリが出てきた……。しかし、この直後、よりによってマグライトの電池あるいは電球が切れてしまい、真っ暗に。

『スカリー、ンゴッ、ゴキブリだあっ!……フォウッ!懐中電灯が切れたっ……!』と叫ぶ悲痛なモルダー捜査官。

スカリーは「だからマグライトの電球は切れやすいから捜査活動の前に必ず交換しとけって言っただろうが!」と怒鳴りはしなかったが、ゴキブリに囲まれ絶体絶命のモルダー捜査官

その直後『あっ大丈夫、もう切るよ』と普通に電話を切るモルダー。スカリー困惑。モルダーの危機を救ったのは農務省の研究者バンビ・ベレンバウム(美人……かどうかは人によるだろうが、どうやらモルダーのタイプだったことは確かのようだ)その人であった。

結局、再度モルダーからの電話連絡でモーテルの泊り客が死んだことを伝えられたスカリー。

彼女は重い腰を上げ、D.C.のジョージタウンに所在する自宅から、300キロは離れたマサチューセッツのミラーズグローブ(架空の街)へ、モルダーの捜査応援のために緊急出動。稚内から網走くらいあるぞ……なんだ近いのか。…お前、どこ住んでんだよ。

さっきまで自宅でくつろぎながら、アイスクリームを頬張り、犬を洗ったり、愛用の拳銃のバレル・クリーニング(火薬カスふきふき作業とオイル塗り塗り作業)などをしていた彼女は非番捜査官。なのに、自分で車を運転して来たんだからスカリーは本当にご苦労だと思う。

せめてヘリとか。ヘリは早そうだが、局の許可をとろうにもモルダーがゴキハウスに不法侵入しちゃってますしなあ。ミキハウスみたいに言うのやめなよ。

一方、フルサイズのマグライトに比べると出番は少ないが、全長15センチ程度の小さいミニマグ(MINI MAGLITE)も二人は捜査に活用。

おそらくマグライト3-Cell CかDは捜査車両やレンタカーへの常時搭載で、コートのポケットにはEDCとしてミニマグを常時携行か。

ちなみにスカリーは検視作業もこなすため、必需品といえるペンライトもEDC。通常の捜査や探索に使うライトとは別に、二本持ちなのだろうか。

フルサイズモデルに比べ、ペンライトサイズのミニマグは照射範囲こそ狭いものの、当時、小型軽量のペンライトとしては優秀だったのだろう。明るさはおそらく10ルーメン程度だと思う。ちなみに筆者が愛用しているSUREFIRE G2X LEのローモードが15ルーメンなのだが、この程度の明るさでよく当時はがんばっていたなあ……。

SUREFIRE G2X LE (Law Enforcement) レビュー

season1のFile No.21 (1X21) 「輪廻」 BORN AGAINでは、モルダーとスカリーが民家突入時にかざしていた。ビームが良く伸びていてカッコイイ。もちろん撮影用のスモークマシンあっての魅惑的な演出である。

こちらはハリウッド血液バンクの地下を探索する「給料計算会社のモルダーと言います」さん。画像の典拠元 『X―ファイル』シーズン2第7話『トリニティ』 (C) Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

そして、ミニマグを手にしたモルダーが、ハリウッド血液バンクの地下を探るのがシーズン2の第7話トリニティ。こちらも鋭いビームが闇を切り裂く場面が描かれていた。

MINI MAGLITEには単四電池2本仕様の2AAAと単三電池2本仕様の2AAがある。同エピソードでモルダーが使うのは単三電池2本仕様の2AAだろうか。

とにかく当時のマグライトはクリプトン球だったため、暗かったしダークスポットも目立っていた。その後、キセノン仕様になり、現在はLED化され、ダークスポットもなくなり、復活を遂げた感がある。

しかし、むしろマグライトの頼りなさ、不気味なチョウチンアンコウみたいな弱いトモシビこそが、本作をよりオカルトチックに仕上げることに貢献したのではないだろうか。

逆に言うと、中盤から登場した警察用の高出力で小型のキセノンライト(後に詳しく解説)はモルダーとスカリーの捜査能力向上に格段に貢献したかもしれないが、本作初期シーズンの持つおどろおどろしさを悪い意味でぶち壊した可能性もなくはないだろう。最新の2016や2018で使用されている後述のハイパワーなLEDライトなら、なおさらだ。

そう思うと、マグライトには感慨深いものがある。まあ、初期のころから必要に応じてマクサビームで爆光を放っていた彼らであるのだが。

マグライトと並行使用された小型軽量ライトUnderwater Kinetics SL4

画像の典拠元 『X-files』 シーズン3第21話 「 Avatar (化身) 」(C)Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

シーズン3第21話 「Avatar (化身)」にて、警察の押収車コーナーでスキナーの車を入念に調べているスカリーとモルダー。ちなみになんと、モルダーは普段、折り畳みナイフも所持。おい。スカリーが手にする全長15センチくらいのこの小型ライト『Underwater Kinetics SL4』に注目。

また同seasonの22話『ビッグブルー』にて愛犬クイークェグを捜査に仕方なく連れてきたスカリーがクイークェグのお散歩時に使っていたり、シーズン5第11話 「KILL SWITCH」にて、重要参考人の女性プログラマーが身を隠す港のコンテナハウスへ突入し、同女の身柄確保の際や、そのあとの関係先捜索などにも使用していた。

Season4の第20話「スモール・ポテト(Small Potatoes)」ではズボンの右ポケットから颯爽と取り出すモルダーがいい。

上の画像は近親婚一家を描いた「ホーム」より。こちらはモルダーが持つUnderwater Kinetics SL4の細部がくっきりとわかるベストショットだ。こう見ると結構平べったい感じがして軍用ライトっぽいね。バッテリー容量も大きそう。でも落とすとパリーんといきそう。画像の典拠元 『X-files』 (C)Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

これ、実は驚くことに本来ダイビング用水中ライト。非常に実用的な懐中電灯で、クリプトン球のマグライトに比べるととても明るく、ヘッド全体から漏れる光が周囲を照らし出し、エルビス・プレスリーが42歳で死んだこともわかってしまうほど(実際はどこかで生きてると大部分のアメリカ人は信じている)照射範囲がとても広いのだ。

樹脂製でいかにも軽そう。色は各カラーあり。ポケットにギリギリ入れて持ち運びしやすそうなサイズなのもgood。

結構、Xファイルでは登場回数の多い、息の長いライトである。

そして、お次はモルダーとスカリーがついに持ち出した小型強力な次世代型ライトをご紹介したい。

モルダーとスカリー、マグライトを捨て、ついに強力な警察向け戦術ライトを使う

強力なルーメン数を持つ、いわゆるタクティカルライトが米国の法執行機関や軍で一般的になっていった90年代中盤以降。

このころ『Xファイル』のシリーズは5か6あたりに進んでいたと思う。

シリーズ5あたりからモルダーとスカリーがポケットに入れ始めた懐中電灯は2種。これらを持ち始めたことにより、家屋内等の捜査能力が向上するに至る。

まずは一方の旧・レーザープロダクツ社時代のSUREFIRE 6Pからご紹介しよう。

スカリーがおもに愛用するSUREFIRE 旧型6P

画像の出典 File No.604 How The Ghosts Stole Cristmas 「クリスマス・イブの過ごし方」より(C)Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

スカリーは懐中電灯の伝説を作ったSUREFIRE社(旧・レーザープロダクツ社)の6Pを使用していた。90年代中盤、SUREFIREのパーソナル・ハンドライトは法執行機関や軍隊がこぞって導入した。

旧型6Pは側面のロゴもなく、ヘッドのデザインも現行モデルとは異なっている。

ただ、少なくとも『Xファイル』が作られるより前の80年代、すでにSureFire 6Pは存在。しかし、警察機関への普及は進んでいなかったのだろうか。少数精鋭のFBI捜査官には当時から愛用されていてもおかしくはなさそうだが……。ここらへんについては当方も研究不足である。

SUREFIRE 6Pが傑作と呼ばれる理由を解説

なお、90年代後半、FBIアカデミー卒業時及びSUREFIREトレーニングプログラムへ参加した際には、記念品としてG2Zコンバット(その後、LED化されたG2ZLに)が支給されていたそうである。卒業記念に和英辞典もらうよりよっぽどいい。現在は別モデルだとは思うが、なかなか興味深い話である。

考えてみればFBIの中でもモルダーとスカリーこそ真っ先に、SUREFIREのトレーニングプログラムへ参加を命じられそうな気がする。むしろ、経験豊富なモルダーが逆にSUREFIREトレーニングセンターのインストラクターに実戦を教え込んだりして!?

とは言っても、劇中でモルダーとスカリーがHarries flashlight techniqueを魅せてくれるシーンは後述の新シリーズ2016版を除いて1回か2回だった気がするが。

なお、モルダーらがFBI職員考案のRogers/SureFire flashlight techniquをやっていたことは一回もないはずだ。あれ、ドラマだと滑稽よな……。

さて、1999年12月12日に公開されたseason7のエピソード『ゴールドバーグ』はXファイルで主役二人が使うライトが気になるファンにとっては興味深い。

この回は、冒頭でマフィア相手のポーカーで大勝ちした幸運の持ち主・ヘンリー氏(アパートの管理人)がマフィアに逆恨みされてビルの屋上から地下に突き落とされてしまうというムゴいシーンから始まるのだが、穴には不運(!?)なヘンリー氏はおらず、義眼だけが落ちていて現場検証を行うモルダーとスカリーは困惑する。

その場面で、まずスカリーがスーツのポケットから取り出して検証に使用していたのが、レーザープロダクツ社時代のSUREFIRE 6Pだ。画面に大写しになるので、1インチサイズのヘッド、太くて短い絶妙の黄金比サイズ、テールから飛び出したスイッチなどの特徴がよくわかる。なお、スカリーはテールを捻って点灯させている。

その後、義眼を頼りに二人はヘンリー氏が管理人を務めるアパートへ出向くのだが、そこで住民の主婦から水道のバルブを閉めてほしいと頼まれたモルダーはキッチンで水道トラブルうんぜんえんの修理業者役を買って出る。困っている市民を助けるのが暮らし安心FBI捜査官とはいえ、スーツ姿のモルダーがレンチ片手にシンクの下へもぐり込むクラシアン状態を傍らで笑いをこらえながら『クックック……』と見守るスカリー。ククク……。

しかし、逆に水道管のバルブを破壊したモルダーは、漏水によって脆くなっていた床を破って階下へ落下。尾てい骨を激しく打ったモルダーを上階の穴からSUREFIREで照らしながら唖然とも苦笑ともつかない表情で見つめるスカリーであった。

ただ、これはドラマの臨場感を出すための演出なのだろうか、スカリーが旧型6Pのテールをひねって点灯させるシーンではカチッという比較的大きな音が響く。現行の6Pオリジナルはテールスイッチを回しても音はしない。もともとこのライトの目的は戦術使用にあり、犯人に静かに忍び寄る警察特殊部隊が不用な音を立てない開発思想だ。

次いで、season6の第15話『スイート・ホーム』。このエピソードではモルダーとスカリーが疑似夫婦を演じるのも興味深いが、もちろんライト好きもこの回を見逃してはいけない。カリフォルニアの優良住宅地TOP5に6年連続でランキング入りしている『理想郷』を称する高級住宅街のアルカディアで3組の夫婦が行方不明になる事件が発生。二人は身分を隠し夫婦を演じて住宅街に移り住み、内偵捜査を行う。夜間、住宅街で近隣住民の飼い犬が逃げ出して側溝に入り込んでしまうのだが、そこでスカリーがポケットから颯爽とSUREFIREを取り出して、犬を探しに側溝にライトを突っ込むシーンがいい。

その傍らでは、ポケットからSUREFIREを取り出したスカリーを犬の飼い主である主婦が『何なのこの人……なんでそんなのポケットに入ってるの?』みたいにギョッとした顔で見つめるのも意味深げ。捜査関係者だと感づいた伏線か?ここでもスカリーがテールスイッチを回すとカチッという音が響いて点灯する。なお、旧型も現行の6Pもテールを回して点灯させるほか、ボタンを押し込んでる間だけ点灯するモーメンタリー・スイッチの2通りのスイッチが備わっている。

このシーンでは比較的、ライトの形状がわかりやすい。ヘッド前方にナーリングを施した形状、ヘッド後端がなだらかにではなく、急激に角度を落とす縁。そして本体テールから飛び出したスイッチ・ボタン。これは明らかにSUREFIRE旧6Pの特徴に限りなく合致している。

ただ、スカリーがSUREFIREを使うのはこれらのepisodeくらいで、非常に少ない。一方、モルダーはSUREFIREを使ったことはシリーズを通して一度も無いように思えたのだが、よくよく見ると、File No.604 How The Ghosts Stole Cristmas 「クリスマス・イブの過ごし方」でモルダーも使っていた。以下の画像を見ると良くわかると思う。

画像の出典 File No.604 How The Ghosts Stole Cristmas 「クリスマス・イブの過ごし方」より(C)Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

この画像を見ると、モルダーとスカリーはともにSUREFIRE 6Pを使っているように見える。ただ、本作品全体を通して、スカリーとモルダーがSUREFIREを使う場面は非常に限定的で数えるほどしかない。

STREAMLIGHT SCORPION( スコーピオン )……モルダーとスカリーが多用

前述したseason7の『ゴールドバーグ』の話の続きであるが、SUREFIREを使うスカリーとは対照的に、モルダーがアパート内でかくれんぼするヘンリー氏捜索にストリームライトのSCORPIONを使って壁の穴を調べているのが興味深い。

このシーンではモルダーの顔とライトがアップになるシーンがあるが、ライト本体は画面に半分しか映らない。だが、ライト本体にテールスイッチが見当たらないことや、特徴的なラバーボディーのデザインが見えるので『SCORPION』であることは明白。

なお、モルダーはテールをカチッとテールを押し込んで消灯し、乱暴にポケットに突っ込んでいた。ゴム製のボディだからFBI捜査官のモルダーのスーツのポケットにも優しそうだ。ゴム臭いけど。

season7の21話『三つの願い』にて貸倉庫の中を捜索するスカリー。その手に鈍く光るSTREAMLIGHT SCORPION。テールスイッチは内蔵式のため外部から見えないのが特徴だ。SCORPIONのデザインは見事に現在市販のものと同じだ。画像の出典 X-files 7-21 Je Souhaite (三つの願い)より (C)Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

ほかにも、series7の第9話『神のお告げ』においてもモルダーとスカリーの使うSTREAMLIGHT SCORPIONの登場率が高い。モルダーはスカリーとともに颯爽とポケットからSCORPIONを取り出して密売人の麻薬ハウスや神父のヘビ屋敷を探るのだ。

第12話の『Xコップス』ではギャングたちの家に突入するロサンゼルス郡保安官局のシェリフたちが重たそうなマグライト(時代的にキセノン球?)を構えて突入するのに対し、モルダーとスカリーの二人はともにポケットサイズのスコーピオンを使う。それでいて明るさはほとんどマグライトと同等で、指先でスコーピオンを軽々と構えるスカリーを見ると、やっぱり当時としては革命的である。もっとも、警官にとっては『長い金属製懐中電灯』でなければならない事情があるのだが。

またコメディ色の強い第19話『ハリウッドAD』ではモルダーとスカリーの実際の捜査に密着取材し、二人と実際の事件をモデルにした映画を撮ろうとするハリウッドの映画ディレクター(目の前で超常現象を見てもどこか冷めている現実主義者の彼)を描くが、教会の地下の探索でモルダーがディレクターと共にSTREAMLIGHT SCORPIONで光の筋を大いに描きながら、まさにドラマティックにナニかを探るシーンは見もの。

なお、このepisodeおよび、6-13 Agua Mala (アグア・マラ)ではモルダーとスカリーがライト本体を口にくわえていたが、それが出来るのも、スコーピオンのラバー製外装のおかげだろう。

完成した映画の試写会に招待されるモルダーとスカリー、そしてスキナー副長官。

ところで、この『映画』では、ゾンビたちを倒したモルダー役とスカリー役の2人が、丘を転げて棺おけに入ってしまうシーンで以下のようなやり取りが。

スカリー役女優『これは懐中電灯なの?モルダー……。それとも私の上に乗ってゴキゲンなのかしら?』

モルダー役俳優『僕の懐中電灯だ。ああ……そっちね』

モルダーは試写会の会場で『最悪だ……』という感じで顔を伏せるが、スキナーは興味深そうに笑ってみていた。スカリーは?

試写会を楽しんだ(?)3人は、そのあと高級ホテルの泡ぶろで、それぞれ優雅にバスタイム。スキナーの計らいで局のカードを使っていいそうだ。こちらも見逃せない。なお、カーシュ長官代理就任後は、これら経費の支出がのちの局内監査でモルダーを不利な状況に追い詰めていく一因となるのだが。あのハゲ、余計なことしやがって。いや、これもスキナーが最初から仕組んでいた……?

ドゲット捜査官登場

なお、モルダー失踪後、シーズン8にてXファイル課の後任として登場するドゲット捜査官、レイエス捜査官が登場するが、彼らもストリームライトのスコーピオンを使用する。

スカリーは当初、ドゲットに対して敵対的および懐疑的であった。なにしろ彼女とドゲット捜査官との初めての出会いは、彼女からの紙コップ水による洗礼という荒々しいものであったのだから。モルダーにいたっては初対面で『あんたがドゲット?』と言った直後、握手のために手を差し出したドゲットを突き飛ばすなどこちらも酷い。ドゲット捜査官かわいそう過ぎる・・・。

しかし、捜査中にドゲットから命を救われたことからスカリーは彼をパートナーとして認め、それまでデスクに鎮座させていたこの部屋の主である『FOX MOULDER』のネームプレートをそっと引き出しの奥にしまう心理描写はグッとくるものがある。

シーズン8の『爪痕』ではライトを構えて屋根裏を探ろうとするドゲットが、スカリーに『懐中電灯は?』と訪ねる場面がある。しかし、スカリーは一瞬言いよどんでから『……持たないっ!』と答えたのが、意味深。これが何を意味しているのかは、2016の小説版を読むとなんとなくわかるだろう。

実は本作においてストリームライト・スコーピオンは多岐のシーズンにわたって登場するとても息の長いライトである。実にseason6からseason9までモルダー、スカリー、ドゲット、レイエスの携行する懐中電灯としてほぼ固定されて登場し続けた。

おそらく2008年版の映画X-ファイル 真実を求めてにおいてもスキナーも使用していた。

シーズン6の17話『電界』にて、民家突入時にシグ・ザウアーとストリームライトを使用するモルダーとスカリー。(C)Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

このseasonが放映された97年から2001年にかけては、surefireが(軍隊や警察、それにミリタリーマニアなどから)人気だったと思うが、敢えて5年もストリームライト社のスコーピオンという一つの機種をXファイルで使い続けた理由は何だったのだろうか。強いこだわりを感じる。ストリームライト社がスポンサードしていた可能性も捨てきれない。冒険野郎マクガイバーでビクトリノックスがスポンサードしている例もあるしな。

なお、ストリームライトのスコーピオンは現在も当時とほぼ同じデザインと性能のものを購入できる。

さて、モルダーとスカリーの使う各種のフラッシュライトに言及してみたが、いかがだっただろうか。

ところでモルダーを演じたデイビッド・ドゥカブニーと、スカリーを演じたジリアン・アンダーソンによるトークショー(2008年)にてジリアンが以下のように発言しており、興味深かったのでご紹介。

G:私はナンバー1だった?ナンバー2だった?私たちの携帯がどんなに大きかったか
覚えてる?たまたまそれをポケットに入れてたというわけ。

(もうみんな笑い転げてる。)

D:そうさ。きみはそれをポケットにいれるために、トレンチコートとか着てないといけなかった。
G:片方に携帯、もう片方には Xenon のフラッシュライト。

翻訳と典拠元 My Library様 http://blog.goo.ne.jp/danayymulder/e/e56e5248b1384a717a137765ab8768c4

ジリアンは当時の時代背景を面白可笑しく表現するにあたって、当時劇中で使っていた小道具の前時代的さを引き合いに出すのだが、ライトをただのフラッシュライトではなく『Xenon (キセノン)のフラッシュライト』と表現するあたり、彼女自身も当時、仕事でライトを使ってきた人間としてライトには造詣が深そうに思えてしまう。

というよりも彼女、当時撮影中に何回かカメラの前でキセノンバルブが切れたことがあるんじゃないだろうか?それでNGシーン連発したりして『あー、またか、このクソがあっ!』ってキレたり?

ジリアン、っていうかスカリーが表現したこのキセノンのフラッシュライトは非常にデリケートであり、注意深く丁寧に扱わなければならない。また、普段使いに用いようと思うなら、ランニングコストが結構かかることになるので予算は多めに見積もりたい。

それについては、キセノンライトの傑作ライト・Surefire6Pの解説ページにて詳しくキセノンバルブの特性などを説明してみたので興味があれば一読を。

連邦政府の予算で捜査を行うモルダーとスカリーにとってはCR123A電池の価格もバルブ代も関係ないのかもしれないが……。とは言っても、モルダーは捜査費の使い過ぎを局の監査官に責められていた。何度も言うな。

モルダーとスカリーの懐中電灯まとめ

というわけで、モルダーとスカリーがこれまでに使ってきた主な懐中電灯は以下の5つ。

  1. MAGLITE(主にシーズン1から4まで)
  2. MAXA BEAM(主にシーズン1から4まで)
  3. Underwater Kinetics(主にシーズン2から4まで)
  4. STREAMLIGHT(主にシーズン6から9まで)
  5. SUREFIRE(主にシーズン6。かなり限定的に使用)

以上。

劇中に登場した小物を手に、モルダー捜査官やスカリー捜査官になりきって彼らの当時の時代背景を愉しんでみたいと思うファンはこれらのライトで仲間同士とライトの光を交差させて『X』の文字を作って遊んだり、実用に使ったり、コレクションしてみてはいかがだろう。

なお、続編となる2016、2018それぞれに登場するライトも以下の記事で解説済み。

『Xファイル』2016年版で登場したライトの機種が判明!詳しく解説します!

Xファイル2018(season11)でモルダーとスカリーが使っていたライトは?