合成洗剤や柔軟剤をやめ、無添加の洗剤やせっけんに切り替えてからというもの、自分の体調と生活の質に明らかな変化が現れた。
これはそんなある個人の体験談である。
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無添加洗剤に切り替えたら、暮らしが静かに変わった
かつて当たり前のように使っていた市販の合成洗濯洗剤。だが、その中に含まれる人工香料や界面活性剤が、じわじわと心身に影響を及ぼしていたことに、ようやく気づいたのだ。
体のだるさや頭の重さ。
以前は常に眠気や疲労感を感じており、イライラすることも多かった。頭痛も慢性的で、鎮痛剤が手放せなかった。
ある日ふと、洗剤の匂いが強く感じられたのをきっかけに、使っている製品をすべて見直した。試しに無添加の衣類用せっけんに切り替えてみたところ、数日で頭痛もおさまり、体全体が軽くなり、気づけばイライラや眠気も減っていた。身体が正直に反応していたのだ。
参考サイト(公的機関)
柔軟剤等の香りで体調を崩してしまう【匂いに関する注意喚起】- 流山市
これは一般に「香害」と呼ばれる香りの問題である。合成洗剤をはじめとする日用品に含まれる強い香りは、自分では気にならなくとも、他人には不快に感じられることがある。
満員電車や職場など、人と距離が近い場面ではとくにそうだ。
さらに重要なのがペットの健康である。自宅にはにゃんこがいる。猫は人間と違い、体内で化学物質をうまく分解できない。とくに合成洗剤に含まれる残留成分は、舐めたり吸い込んだりしたときに深刻な影響を及ぼす可能性がある。
代替できる安全な洗剤は
その点、セスキ炭酸ソーダや重曹、クエン酸、せっけん、アルカリ電解水といった無添加の洗浄剤は、毒性がまったくないか、あっても極めて微量にとどまる。
肌や呼吸器への刺激も少なく、安心して日常的に使える素材ばかりだ。
これらを、界面活性剤や香料、防腐剤などを多く含む合成洗剤・柔軟剤の代わりに使うことで、体調が改善するという例は決して珍しくない。
実際、我が家では室内の空気が軽やかになり、猫の落ち着いた様子を見るたびに、この選択は正しかったと感じている。長く一緒に過ごせるだろうという小さな希望も、以前より現実味を帯びてきた。
無添加のせっけんは、衣類にとってもやさしい。合成洗剤や柔軟剤の成分は、知らず知らずのうちに繊維を傷め、色褪せや型崩れを早めてしまう可能性がある。
せっけんに切り替えてからは、服のもちが良くなったと実感する。素材本来の風合いが、洗うたびに少しずつ戻ってくるような、不思議な手応えがある。そしてなにより、どこか懐かしい、あの昭和の子ども時代を思わせる素朴な香りが心地よい。
柔軟剤を使わずとも、せっけんだけで衣類はじゅうぶんにやわらかく仕上がる。さらにふっくら感を出したい場合は、仕上げにクエン酸を少量加えるといい。
目安としては、水30リットルに小さじ1杯程度。合成柔軟剤を使う理由が、もはや見当たらなくなるはずだ。
経済的にも利点は大きい。特筆すべきは、重曹やクエン酸が掃除だけでなく、身体にも使えるという点だ。
重曹は歯磨き、洗顔、ボディケアに。クエン酸は洗髪後のリンスとして髪を整えてくれる。
こうした多用途性が、無添加の暮らしを一層自然なものにしてくれる。
合成製品にかかっていた年間出費
市販の合成洗剤やシャンプー類など、かつて何の疑問も持たずに買い続けていた品々。その年間出費は、ざっと16,000円ほどにのぼっていた。内訳は次のとおりだ。
食器用洗剤……2,000円
衣類用洗剤……2,000円
歯磨き粉………1,000円
リステリン……4,000円
シャンプー類…2,000円
ボディーソープ…1,000円
トイレ洗剤……1,000円
アルコール除菌スプレー…3,000円
いま振り返ると、なぜこれだけ払っていたのか不思議になる。香りや泡立ちに惹かれて、肌や呼吸器を犠牲にしながら「清潔感」を買っていたらしい。
しかもこれは、大容量や詰め替えパックやショッピングサイトのセールで買うなど、いちおう節約の努力はしていた結果である。
しかも、このような合成洗剤に限って、商品価格の20〜30倍も大量にポイントバックがつくのは今思えば「原価はいくらなの?」と不思議に思う。
ともかく――今まで自分はムダの最適化をしていただけ、ということだ。
非・合成洗剤にかかる年間出費
市販の合成製品に年間16,000円も払っていたことに、ある日ふと疑問を抱いた。
それが「セスキ、重曹、クエン酸、せっけん、アルカリ電解水」というたった5つの無添加洗浄剤で、すべて代用できると知った瞬間から、生活の質も支出の感覚が変化。
以下はその置き換え例である。
不要になったもの | 代替手段 |
---|---|
食器洗剤 | セスキ or 重曹 |
キッチンクレンザー | 重曹 |
歯磨き粉・洗口液 | 重曹 |
衣類洗剤・柔軟剤 | せっけん+クエン酸 |
ボディソープ・シャンプー・リンス | せっけん or 重曹+クエン酸 |
アルコール除菌スプレー | アルカリ電解水 |
トイレ洗剤(便器・便座) | クエン酸水/アルカリ電解水 |
ガラス用洗剤 | アルカリ電解水 |
洗面所、キッチン、リビング、風呂場、トイレ。かつては場所ごとに「専用洗剤」が必要だと信じ込まされていたが、実際はその大半がマーケティングで作られた幻想だった。
それをすべて無添加に切り替えた結果、年間の洗剤代はおよそ5,000円にまで削減された。しかも、安全性は格段に上がり、環境負荷は激減。人間は1日に15,000リットルの空気を吸い込む。香料や合成界面活性剤の気配が消えた空間で暮らす気持ちよさは、金額には換算しにくいが、確かな変化だ。
「重曹やクエン酸でエコ生活なんて、お金がかかるんじゃない?」
そう思っている人も少なくないが、ある意味それも合成メーカーによる洗脳ではないだろうか。実際に家じゅうを無添加の洗浄剤で回してみると、まったく真逆だったとわかる。多用途・低価格・無毒性。まさに、”安くて安全”が両立する、今どきでは貴重な存在である。
ただし、買い方にはちょっとしたコツがある。
楽天市場のセールなどで、年に一度、大容量(1~3kg)をまとめて購入するのがベスト。コスパが跳ね上がる。
また、重曹やクエン酸を歯磨きやうがいに使うなら、必ず「食用グレード」を選ぶこと。これさえ守れば、家庭のあらゆるケアに安心して使える。
「高いのはどっちか」――今なら冷静に答えられる。
洗浄力
食器洗いって、毎日のことだからこそ、少しでも気持ちよく終わらせたい。
そこで試してみてほしいのが、セスキや重曹。これが化学的に根拠がある頼れる存在で、実は合成洗剤よりもずっとよく落ちる。
しかも使い方はとても簡単。セスキを空き瓶に入れておいて、使うときに大さじ1くらいを洗いおけやどんぶりに入れて、ぬるま湯で溶かすだけ。そこに使い終わったお皿や茶碗を浸して、指で軽くこすってみてほしい。油汚れがスルッと落ちていく感覚、きっとクセになると思う。
肌が敏感な人は、ゴム手袋を使えば安心。でもセスキも重曹も刺激はかなり控えめ。合成洗剤のピリピリ感に悩まされてたなら、きっとホッとするはず。
なぜこんなに落ちるのかというと、ポイントは「アルカリ性」。
合成の洗剤のほとんどは「中性」なのだ。中性洗剤は油汚れがあまり得意じゃない。
でもセスキや重曹はアルカリ性。油やたんぱく質をしっかり分解してくれるから、あれこれこすらなくても大丈夫。
ちなみに、昔ながらのお米のとぎ汁もアルカリ性。昔の人たちは、それだけで台所をきれいにしてた。だから自然な洗浄って、実はすごく理にかなってる。
「ナチュラル派は非科学的」とか言われがちだけど、ちゃんと根拠がある、中性洗剤より科学的根拠があるのだ。
むしろ、よく知らずに強い洗剤を毎日使い続ける方がちょっと心配かも。
合成洗剤をやめると、空気が軽くなる感じがして、手も荒れにくくなるし、台所に立つのが前よりずっとラクになる。不思議と、気持ちにも余裕が出てくるような気がする。
まずは一回、気軽にお試しを。小さな変化だけど、きっと毎日がちょっと優しくなる。
洗濯、洗面、歯磨き、そして入浴まで――万能の自然派素材たち
合成洗剤に頼らない暮らしは、決して一部のための選択ではない。実際に使ってみればわかるが、自然素材だけで十分以上の洗浄力と快適さが得られる。
上述のクエン酸、重曹、セスキ、無添加石鹸、アルカリ電解水の5つは、実際に僕が普段使用しており、多くの自然派の方がおすすめする、もっとも基本かつ安心して使える代表格。

これらは単体でも十分な洗浄力を持ち、用途によって組み合わせることで、汚れにより効果的。
パウダータイプのセスキをキッチンで普段使いするとき、適切な容器に入れたいもの。
簡単に取り出せる専用ディスペンサーとは、粉末状のセスキ炭酸ソーダを手軽に、かつこぼさずに取り出せるように設計された容器や道具のことです。
以下にいくつかのタイプを紹介します。
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プッシュ式ディスペンサー:
- プッシュボタンを押すと、一定量のパウダーが出るようになっています。
- 使いたい量を簡単に調節できるので便利です。
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スプーン付きボトル:
- ボトルの中に専用のスプーンが付いており、必要な量をスプーンで取り出せます。
- スプーンがキャップに固定されているタイプもあります。
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キャップ付きシェイカー:
- スパイスやベーキング用のパウダーシェイカーのように、キャップを回して開けるとパウダーが振り出せる仕組みです。
- 必要な場所に直接振りかけることができます。
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プラスチック製のパウダーポット:
- 透明なプラスチック容器に入れ、蓋を開けるときに取り出しやすい構造になっています。
- 密閉性が高いので、湿気を防ぎつつ使えます。
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ダストポンプ:
- ポンプを押すことで粉末が出るタイプのディスペンサーです。
- 手を濡らさずに使えるので、キッチン周りでの使用に適しています。
これらのディスペンサーを使うことで、手や指が水で濡れていても、セスキを便利に取り出せる。
もちろん、ダイソーなどの100円ショップで手に入るもの。
エコフレンドリーなライフスタイルを実践のため、クエン酸や重曹に興味を持たれた方、どこで購入するか知りたいですよね。多くのエコフレンドリーな方は以下のような場所を選んでいるかもしれません。
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楽天24のスーパーDEAL: 正直言って、一番安く買えます。特に食品添加物グレードで、大容量でコストパフォーマンスの良いものを探す際には月に何回かあるスーパーセールで買うのがおすすめです。
- 100円ショップ: 実は最も身近で買えるところです。ただしどちらにも食品添加物グレードの重曹やクエン酸は売っていませんので、重曹を口に入れる場合は安全のために食用グレードを選んでください。
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ドラッグストア: 合成洗剤コーナーにクエン酸と重曹などが置いてありますが、あまり行かないほうがいいですよ。近所のドラッグストアでは日用品と一緒にちょっとした食品も購入できますが、店内は化学物質まみれ。昔はよく利用しましたが、合成洗剤をやめるともう行く理由がなくなりました。今考えるとここで食べ物を買っていたのが恐ろしいです。かぜ薬?食事で治す派なので買いません…。
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スーパーマーケット: 一般的なスーパーならどこでも。業務スーパーでもオーケー。特に、食品グレードの重曹やクエン酸は調理にも使われるため、食品コーナーをチェック。ただし、量は少なく割高になりますので、楽天24がお勧めです。
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キッチンではセスキ、重曹がおすすめ
たとえばキッチン掃除。油汚れやヌメリには重曹とセスキの出番。
シンクに重曹をふりかけ、水で濡らした手で軽くこすってみる。スポンジは不要。指先と手のひらだけで十分。むしろ、汚れ落ちの良さを指先で楽しんでみて。
油汚れはたちまち浮かび、匂いも一緒に消えていく。ネギを切った包丁を軽く水で流してからパウダーボトルの重曹をかけて、指で往復して擦ってから流水洗いしてみて。あっという間に汚れは落ちるから。
また、使用後のどんぶりにセスキを一つまみ入れ、水を加えて少し置くだけで、ヌメリは驚くほど簡単に落ちる。実際にはつけおく必要もないことが多い。
セスキの持つアルカリ性の力で、食器の汚れは自然と剥がれていくのだ。
さっきも言ったように、ここで重要なのは、みんなが長年当たり前のように使ってきた市販の台所用洗剤のほとんどが中性洗剤だということ。
これは界面活性剤の働きに頼っているだけで、汚れの性質に対してアプローチが間違っているのだ。
実際、東京都クリーニング生活衛生同業組合もこう述べている。
「一般的な台所用洗剤は中性洗剤で、基本的には界面活性剤の働きだけで汚れを落とします。しかし汚れを落とすことを優先するのであれば、本来中性ではなくもっとアルカリや酸の成分を高めることで解決できるはずです」― 出典:東京都クリーニング生活衛生同業組合
すなわち、汚れには性質があり、油汚れやタンパク質汚れに対しては中性ではなく、アルカリ性の洗浄剤を使うのが理にかなっているということだ。
「泡で洗う」は思い込みにすぎない
多くの人は、洗剤の「泡」で洗っていると思っている。実際には、泡は視覚的効果に過ぎず、本当に働いているのは洗剤に含まれる成分そのものである。
そして、セスキは泡など出さずとも、アルカリ性の力だけで脂肪酸やタンパク質の汚れを分解できる。そこに添加物も香料も必要ない。
環境にも身体にも優しい。それが「本物の洗剤」である。
洗濯には無添加石鹸、仕上げにクエン酸
衣類の洗濯には無添加の液体石鹸や粉石鹸を使用するのが理想。
これだけで衣類はふんわりと柔らかく仕上がる。柔軟剤などいらない。
さらにクエン酸を仕上げのすすぎ時に少量加えると、石鹸成分の残留も防ぎ、肌にも優しく仕上がる。最初から一緒に入れてしまうと互いに中和されてしまうのでNG。
柔軟剤の香料でごまかされた洗い上がりとはまったく違う、本来の「清潔な仕上がり」である。
洗面所の掃除は重曹+クエン酸で
洗面台のくすみや水垢には、重曹とクエン酸の組み合わせが効果的だ。
まず、洗面台の表面に重曹とクエン酸をふりかける。水で濡らした指先と手のひらで軽くさすってみると、
シュワシュワとした発泡とともに、わずかに爽やかな「ラムネのような香り」が立ちのぼる。
汚れはみるみる落ち、表面はつややかに光りはじめる。
スポンジも洗剤も不要。人間の手と自然の反応だけで、ここまできれいになるのだ。
重曹は体にも使える――入浴と歯磨きにも
重曹の用途は家の掃除だけにとどまらない。食用グレードの重曹は入浴や歯磨きにも使える。
体を洗うときは、温水で濡らした肌に重曹を一つまみ乗せ、手のひらでそっとなじませる。
すると垢が浮き、肌の表面がつるつると滑らかになるのを感じられるはずだ。
「口に入れるなんて」と不安に思う人もいるかもしれないが、重曹はれっきとした食品添加物であり、野菜のアク抜きやふくらし粉として広く利用されている。
つまりは、知らないうちに日常的に摂取している食のパートナーである。知ってしまうと「なんだそうなのか」と拍子抜け。それが安全な自然の洗浄剤の正体である。
除菌にはアルカリ電解水で十分である
「アルコールスプレーがないと除菌できない」と思い込まされている人は多い。はい、それも洗脳。
アルカリ電解水があれば充分である。

引用元 東京ガス公式サイト
テーブル、ドアノブ、トイレのレバーなど、除菌したい場所にシュッと一吹きし、拭き取るだけでよい。
ニオイもなく、水と電気だけで生成される安全な水溶液のため、赤ちゃんやペットのいる家庭でも安心である。
ここにはNG
・電化製品の液晶画面
・木材
・銅や真鍮
最初の一歩は、100円ショップから
クエン酸も重曹もセスキも、無添加石鹸も、アルカリ電解水も――今では100円ショップでも手に入る。
試しに一つ買ってみて、実際に手で掃除してみれば、これまでの「常識」がひっくり返る体験が得られる。
化学製品を手放すことは、決して後ろ向きな選択ではない。むしろ、無駄を省き、本当に必要なものだけを選ぶという、前向きな暮らし方。
また、無添加であることは他者との取引にもプラスに働く。たとえばフリマアプリなどに衣類を出品した際、「柔軟剤の香りがしない」「状態がきれいでベタベタしていない」といった評価が得られやすい。香りに敏感な人にとって、無香料であることは安心材料なのだ。
「高機能」に頼っていた僕が、それをやめた理由
「エコフレンドリーな暮らし」というと、どこかストイックな印象を持たれるかもしれない。だが、実際にはとても穏やかで、無理のない生活様式である。誰にでも始められ、誰の暮らしにもなじむ。
振り返ってみれば、無添加洗剤への移行は、生活全体を静かにアップデートする選択だったと言える。自分自身の体調が整い、周囲への配慮も自然にできるようになり、家の空気は清潔でやわらかい。猫の健康、服の寿命、家計の節約——すべてが少しずつ、しかし確かに変わった。
今では、あの強い香りを思い出すことすらない。
コロナ禍で強烈に刷り込まれた「除菌・抗菌・消毒」信仰
2018年ごろから2023年まで、紫のパッケージでよく知られた液体歯みがき「リステリン・トータルケア」を使っていた。
殺菌、虫歯予防、口臭ケアなど「全部入り」とうたわれるそのシリーズは、強烈な刺激とともに口の中を一掃する感じがあり、安心感もあった。
けれど、2023年以降、それをまったく使わなくなった。当時、まだ世の中はコロナ・ウイルスに過剰な恐怖心を抱いていたその最中だった。
しかし、これから先の人生でも、もう手に取ることはないと思っている。
リステリンだけではない。ボディソープ、ハンドソープ、衣類用洗剤、食器用洗剤――合成の洗浄剤はすべて残っていた分も使い切らずに処分した。
合成洗剤というカテゴリ自体を、生活から抜き取った。
そのきっかけになったのは、コロナ禍で強く刷り込まれた「除菌・抗菌・消毒」という信仰のような感覚に、ある日ふと立ち止まって考えるようになったことである。
2020年、世の中は急速に感染症への警戒感に包まれた。
「接触感染」という言葉が飛び交い、街からアルコールスプレーが消えた。マスクも手に入らなくなり、多くの人がドラッグストアを探し回った。自分もその中にいた。ネット通販で割高な高濃度のアルコール製品を買ったこともある。アルコールスプレーが市場から消えたため、政府が急遽、酒税法の特例措置(飲用不可の明記で税金免除)を打ち出し、酒造会社が作る65%のスピリッツを消毒用に転用する動きが進んだ。自分も一本買った。これで毎日手を拭いたり、身の回りのものを消毒した。恐怖心のなかで、少しでも安心を求めた。
それ以前から、自分は机の上をキッチン用のアルコールで拭く習慣があった。
ちょっとしたコーヒーの跡を拭う程度の目的で、あくまで「汚れ落とし」としての除菌だった。だからこそ、コロナ禍の空気にも自然と乗ってしまったのかもしれない。
いま思えば、あの頃の自分はすっかり雰囲気に飲み込まれていた。
もちろん、「感染症なんて嘘だった」とまでは思わない。ただ、事実として、この5年、一度も重い症状は出なかったし、病院にも行かず、検査も受けなかった。
本当に感染していなかったのかどうかは、もう確かめようもないが、少なくとも大ごとにはならなかった。
このことに対して、深く語るつもりはないが、「国民の8割が行なったとされるあのこと」を自分はしなかったことが大きかったと思っている。
もうひとつ、過剰な除菌をやめたこと。
「ウイルスを排除する」のではなく、「ウイルスと共にある」という視点を取り戻したこと。
それが自分自身の免疫のバランスを保ち、体を守る力につながったのではないか――そんな感覚がある。
この数年間で、ドラッグストアの棚には「抗菌」「除菌」「ウイルス除去」などの強い言葉をつけた商品があふれるようになった。
けれど、中には「本当に効いているの?」と疑いたくなるようなものもあった。
除菌がすぎると、肌や粘膜を傷めることがある。
必要な常在菌まで洗い流してしまい、かえってバランスを崩すリスクもある。
そうした注意点は、当時のテレビCMや広告からは、あまり見えてこなかった。
あるとき、ふと考えた。
「これは本当にわたしたちの暮らしのための製品なのだろうか? “清潔”という言葉の裏に、“恐怖”を利用した商売が隠れてはいないか?」
その疑いが、いつしか確信に変わった。
そして、少しずつ、ひとつずつ、合成の洗浄剤を生活から手ばなしていった。
合成成分入りの製品を今後の人生で一切使うことはないだろう。
静かに蝕まれる日常——体が発していたSOS
もう限界だった。体が、肌が、鼻が、悲鳴を上げていた。
ある日、突然ではなかった。けれど確実に、何かがおかしいと気づいていた。
合成洗剤、柔軟剤、ボディソープ、液体歯磨き……日常に当たり前にあった「清潔」のための製品が、むしろ自分の不調の根源なのではないかと疑い始めた。
界面活性剤、カチオン界面活性剤、マイクロカプセル、そして人工香料。
これらの言葉を一つも聞いたことがない、という人はもう少ないだろう。テレビCMでも、商品パッケージでも、耳にする機会は増えている。
今、これらの成分による健康被害が、少しずつ、しかし確実に広がっている。
「昔は合成洗剤を使っても平気だった」という人も例外ではない。むしろ、そういう人ほど、今の製品との違いに気づきにくいかもしれない。
なぜなら、メーカーは年々、洗浄成分や香料を“強く”しているからだ。
背景にあるのは「菌」「ウイルス」への過剰な恐怖である。
「衣類に菌が残っている」「ウイルスがついている」「臭いの原因はウイルス」——こうした不安を煽る広告が繰り返されることで、私たちは知らぬ間に“強い洗浄力を選ばされてきた”。
けれど本来、人には「免疫」があって、その皮膚には「常在菌」がいて、外敵から体を守る役目を果たしている。
ウイルスとだって、僕たちは共存していた。
それをすべて「殺そう」「除菌しよう」とする今の風潮は、むしろ異常なのだ。
しかも問題は一家庭の掃除洗濯、一個人の健康だけにとどまらない。
強い合成洗剤で洗われた衣類や食器から出る排水は、下水処理場へと流される。だが、すべての有害成分がきちんと分解・無害化されるとは限らない。
地域によっては、そのまま川へ流されるケースもある。
川の水はやがて海へと流れ、空へと昇って雨となり、また大地に降り注ぐ。
その雨に、海の魚や貝など海産物に、わずかに香料のにおいを含んでいると感じたとき、僕は言葉を失った。
香害は、空気や水を通じて静かに生活を侵食している。
鼻が麻痺し、内臓が悲鳴を上げ、子どもたちの発育に影響を与える。我々は、知らぬ間にこうした連鎖の一部に組み込まれている。
気づいたときには、すでに手遅れになっているかもしれない。
だが、気づいた瞬間が、変化の始まりでもある。
もう自分の免疫力を弱めるのはやめよう。
まとめ…合成洗剤を手放してわかったことは「知らないこと」がもっとも高くつくこと
合成洗剤をやめてみて、初めて気づいたことが山ほどある。
あれほど「良いもの」と信じて使っていた日用品の多くは、実は巧妙な宣伝戦略によって作られた幻だったこと、他に良いものは安く売ってること、代用できること……。
紛い物であり、ウソであり、大袈裟な誇張であり、場合によってはただの茶番。
大手メーカーに“上手に”騙されていた、依存させられてきたという事実が、今ならはっきりと見える。
それを自分の中で認めることが、脱却への第一歩だった。
過去の自分はこう書いていた。
「糖尿病でもアル中でもなく、タバコも吸わず、朝晩シャワーや風呂に入り、頭皮の脂を落とし、洗濯にはアタックネオとワイドハイターを使って漂白・除菌している。自分の体臭が臭いはずがない」
今振り返ると、なんともお寒い話だ。全くの勘違いだったのだから。
歯磨きもそうだ。オーラルケアだの、センシティブだの、塩入りだ、生薬入りだと、いろいろ試した挙句、結局どれも「効いている気がする」だけの、自己満足。
それでも当時の自分には、正しいことをしているという確信があった。それこそがメーカーの戦略であり、無知な消費者はその戦略の格好のターゲットとなる。
たとえば、酸素系漂白剤で除菌漂白しても、合成洗剤を使っていれば、その残った成分が生乾き臭や悪臭の原因になる。
要するに、悪臭の元を売っておいて、それを取るための商品をまた売るというマッチポンプが成立してしまっているのだ。
香り付き柔軟剤もそうだ。強い香りで「清潔感」や「癒し」を演出し、いつの間にかそれがないと落ち着かないような感覚にさせられる。
便所芳香剤のフローラル殺虫剤臭にすがるのはもう、依存症と呼んで差し支えない。
酒やタバコ、麻薬には依存性があると国が認識し規制しているのに、合成香料に関しては野放しだ。なぜか。
その背後にあるのが、「香り依存」をビジネスとして活用する企業の論理だ。
とりわけ、強い香りに惹かれやすい層として、女性——特に若い女性——がターゲットにされている。
思い出してほしい。
2022年、ある企業の執行役員が、マーケティング戦略に関してこう口にした。
「生娘をしゃぶ漬けにする戦略」
この発言の主は、元P&Gでアリエールのブランド戦略を担当していた伊東正明氏。当時、吉野家の常務取締役であった。発言は大問題となり、伊東氏は解任されたが、この一言に凝縮された思想こそが、現在の依存症ビジネスの本質を物語っている。
すなわち、「消費者を依存症にさせる」戦略が、既に企業側に共有されているという事実だ。
この構造に気づかないまま使い続ければ、我々は香りに、清潔感に、広告に“洗脳”され、そして最終的に、自分の体と心を損なっていく。
だが逆に言えば、気づけば脱却できる。
そしてそれは、「買わない」「戻らない」と決めたその瞬間から始められる。
たとえば、焼酎の大容量パックを買っている中年男性を見て「アルコール依存症」と、冷ややかに笑う人がいる。
だが同じように、香料たっぷりの柔軟剤を大容量パックで買っている若い女性はどうだろう。本人は「いい香りで癒やされてる」と思っているが、それは人工的に設計された残留香料であり、本来の「清潔」や「肌へのやさしさ」とはまったく関係がない。依存させられてるだけだ。
これは冗談でも陰謀論でもない。
企業のマーケティングによって、本来不要なものを「必要だ」と思わされているだけの話である。
我々はただ、「健康に、安全に生きたい」だけなのである。